【関西外国語大学】国際共生学部の6人が21日間にわたり、ラオスとタイで「スタディービジット」に取り組みました

国際機関や政府機関など約60カ所を訪問し、国際協力の最前線で学び、考え、問いを深めました

関西外国語大学(大阪府枚方市)の国際共生学部2年の6人が6月8日から28日までの21日間、ラオスとタイを訪れて「スタディービジット」に取り組みました。「Experiential Learning(経験型学習、することによる学び)」の一環として、福田和生准教授の指導のもとで、実体験を通して考え、解決策を見つけ出し、実践する力を養いました。




スタディービジットに参加したのは(写真左から)古谷誉さん▽小木戸寿花さん▽大山琴美さん▽星野樹さん▽西村和樹さん▽吉水恒晴さんです。

福田准教授が指導するゼミ「Global Engagement Research Group」のメンバーが参加するラオス・タイへのスタディービジットは2024年にスタートしました。毎年6月に実施していて今回が3回目になります。
■60件近くに上った訪問先
21日間の訪問先は60件近くに上りました。主な訪問先と面談した人物は次の通りです。

【ラオス】
- UNDP(国連開発計画)ラオス事務所
- UNICEF(国連児童基金)ラオス事務所
- Pany Yahotou 元国家副主席/Chaleun Yiapaoher 元国民議会副議長
- UN-Habitat(国連人間居住計画)ラオス事務所/WWF(世界自然保護基金)ラオス事務所
- 世界銀行ラオス事務所
- JICA(国際協力機構)ラオス事務所/JICA海外協力隊の皆さん
- 在ラオス日本大使館/在ラオス米国大使館/EU代表部
- ラオス国民議会(国会)/最高人民裁判所/最高人民検察院
- 農業環境省/教育スポーツ省
- 特定非営利活動法人「ラオスの子どもたち」
- ラオスサッカー連盟/ラオスラグビー連盟
- UXO Lao(ラオス不発弾処理機関)

【タイ】
- UNDP(国連開発計画)アジア太平洋地域局
- UNODC(国連薬物犯罪事務所)東南アジア大洋州地域事務所
- バンコク大学(関西外大協定校)


▲毎朝ミーティングを開き、お互いの意見をぶつけ合いました

■Experiential Learningで広がる学び

▲ラオス最高人民裁判所を訪ねました
貧困、教育、人権、環境、持続可能な成長など6人の学生があらかじめ設定したテーマはさまざまでした。しかし、開発途上国の現状を目の当たりにし、そこで活動する人たちから生の声と率直な意見を聴く中で、考え方は大きく変化しました。キャンパスでの学びでは決して得ることのできない知識や経験にあふれていたからです。



学びの幅を飛躍的に広げ、洞察をより深めてくれるのが「Experiential Learning」です。帰国後、6人の学生はそれぞれの体験や学びを「Laos Study Visit REPORT 2026」としてまとめました。そのダイジェスト版を以下にまとめました。

REPORTの詳細は次のURLでお確かめください
https://www.kansaigaidai.ac.jp/news/topics/id-15850/

≪星野樹さん≫ どこまでも続くジレンマの果てに考えたこと


▲WWF(世界自然保護基金)ラオス事務所でレクチャーを聴く星野さん(左から3人目)
「先進国や国際機関は、開発途上国の発展を手助けしなければならない。その中で自分には何ができるのか」をずっと考えていたという星野さんは、ラオスの国際協力の現場をつぶさに見て歩き、さまざまな話を聴いていく中で、国際開発に抵抗感のようなものを感じ始めました。「先進国の援助には限界があるのではないか」と考えるようになり、「開発は必要」と「開発はいらない」という2つの命題にはさまれるジレンマが続きました。



開発途上国への援助をめぐる議論で、しばしば出てくるのが「答えなんてない」という意見です。たとえば「現地の人のニーズに沿っていること」に固執していると、千差万別のニーズにすべて応えることなど不可能に近いでしょう。答えが出せないことがしばしば起きます。

ジレンマしか感じなくなったという星野さんですが、スタディービジットを続けていく中で「じっくり考えて意見を交わした末に、自分の基準で答えを出すことは必要だと思う」と考えるようになりました。「いつまでも答えを出さないまま、ズルズルといくのが本当に正しいのだろうか。何も前に進まず、実際に苦しむのは現地の人です」と指摘します。

だからこそ、実際に行ってみて、現地を見て、現地で人に会って、生の声を聞くことの大切さを、今回のスタディービジットで痛感しました。「スタディービジットでしか見ることができないものを見て、スタディービジットでしか考えることができないことを考えることができました」とその成果を強調しました。

≪吉水恒晴さん≫ 自分の中での正解とは一体何なのか


▲ホームステイの吉水さん(右端)
さまざまな現場を訪れ、さまざまな人から直接話を聴く中で、吉水さんにはいろいろな“キーポイント”が生まれました。「人間の欲望とそれに対する絶対的存在」「国際協力のあり方」「力を持つ者と力を持たない者のギャップ」「複雑な問題の中ですべての人にとっての利益を考えるジレンマ」「人々の基盤となる衣食住」の5つです。キーポイントと絡み合いながら、自分の中での正解を見つけ出そうと試行錯誤を繰り返しました。



ラオスの人たちの幸せそうな笑顔を見れば見るほど考えざるをえなくなったのが、国際協力のあり方でした。吉水さんは「支援を一度全部打ち切るということも必要ではないか」と考えるようになりました。「コップ1杯のコーヒーを全部水に入れ替えるときを想定します。コーヒーをコップに残したまま、水を注ぎ続けて入れ替えようとすると、コップからコーヒーが完全になくなるまでに大量の水が必要です。しかしコーヒーを最初に全部捨てて、空になったコップに水を注げば、水は1杯分で済みます」と例えます。

「もし今の支援のやり方が間違っているのであれば、最初からスタートし直してもいいのではないか」との思いに至り「どこまで効果があるのかを見極めることは、結局、現地の人たちの利益にもつながるのではないか」と考えるようになりました。

国連機関や国際支援団体の援助が、援助への依存を生み、自立から遠ざけてしまうのではと懸念される場面に遭遇しました。吉水さんは「大きな組織がかかわっても、なかなか変わらない現実がありました。自分の1人の力は小さいと思うことさえありました」と言います。だからこそ、そのような現実を受け入れて、「自分なりに何が正しいのか」を見付けていく必要があると考えました。

≪西村和樹さん≫ 最大の収穫は「答え」ではなく「問い」


▲農業環境省でインタビューする西村さん(右)
西村さんが関心を持っていたのは「環境問題」と「リーダーシップ」でした。

開発途上にある国や地域で、環境保全を進めるのは並大抵のことではないとすぐに気付きました。「農民にとっては今季の収穫量が大切で、10年後や100年後の未来の地球環境を考える余裕がないんでしょうか」と西村さんは感じました。



関係する省庁や国際機関を訪ねる中で西村さんは、途上国の人たちに環境保全やSDGsを理解し、行動してもらう難しさは「Awareness(関心度、関心力)を上げる難しさだ」と感じました。「支援する側は、文化や環境、地域のつながりなど、数字では表せないものこそ開発の中では大切にすべきだということへの関心を高める努力を怠るべきではありません」と強調します。

元大統領府付大臣や元国家副主席、元国民会議法制委員会副委員長ら、国家のリーダーとして活躍してきた人たちと面談する中でリーダーシップのあり方を探りました。「自国について話すときの強い責任感に胸を打たれました。真のリーダーとは肩書ではなく、自国と人々の未来に真摯に向き合い、態度で示すことができる人だ」と考えました。

スタディービジットで得た最大の収穫について「“答え”ではなく“問い”でした」と言います。「開発とは何か」「誰のための支援なのか」とさまざまな問いに答えを出すことはできませんでした。しかし「安易な答えに飛びつかずに、思考を深め、続けていくことこそが学びの本質であり、Experiential Learningではないかと知ることができました」と話しました。

≪大山琴美さん≫ スポーツは国際協力に貢献できる


▲国民会議(ラオスの国会)を訪れた大山さん(右から2人目)
幼いころから水泳や陸上競技に親しみ、現在、体育会水上競技部で活動している大山さんの興味の中心はスポーツ、そして「頭の中は理系で、“正解は1個”という世界で生きてきました」と話します。スタディービジットでは「スポーツと国際協力」を追求しようと考えました。



ラオスサッカー連盟やラオスラグビー連盟、教育スポーツ省のほか、スポーツの支援活動に携わる海外協力隊員などを訪れ、貴重な話を聴くことができました。一方で、スポーツとは直接関係のないと思われる機関や団体でも、積極的にスポーツにかかわる質問を重ねていくと、スポーツと国際協力を考えていくうえで貴重なヒントが満載でした。

女子参加率が世界一といわれているラグビーの現場を訪れた際には、練習の合間にジェンダー平等やルールとは何かなどをテーマにディスカッションを挟んでいることに驚きました。「ディスカッションはmore than game(試合以上に大切だ)」だと説明を受けました。スポーツで学ぶものは技術やルールだけではありません。人生を生きていくうえでのスキルや自信などを養う機会にしたいとの思いが伝わってきました。

途上国への支援については「押し付けになっていないか」「結局は支援する側の自己満足ではないか」と考えてしまうことがありました。ただ、「スポーツが国際協力に貢献できる」との思いは確信になりました。「もちろん負の側面はあります。しかし、スタディービジットでさまざまな人から話を聴く中で確信に変わりました」と話します。これからは国際協力の本質を追求していきます。

≪古谷誉さん≫ 将来やりたいことの物差しを見付けた


▲元国家副主席と面談する古谷さん(左手前)
英語が生活の一部になっているという古谷さんは、外交官や国際弁護士になって国境をまたいだ仕事がしてみたいと思う一方で、芸術に関わるような仕事もしてみたいと思っていました。「何がやりたいのか迷っていました。開発途上国で何を考え、何を感じるのか、自分で知りたいと思いました」とスタディービジットへの参加を決めました。



古谷さんが以前から興味を持っていたのは「(芸能や技術などの“人”や“技”が対象となる)無形文化遺産の保存と法制度」でした。生身の人間の営みを未来に継承するための手段として法律がどこまで対応できるのかは、大きな関心事でした。さまざまな人たちから話を聴いていくうちに「文化の保存を法律で縛って推し進めることは、自然のサイクルを阻害するのではないか」と考えを巡らせるようになりました。

古谷さんが特に大切にしたのは、出会った人たちの「言葉」でした。話の内容を反芻しながら、自らの考え方や価値観と比較しつつ、言葉の一つ一つを思い起こしながら将来に向けての自分について問い続けました。「国が違えば、見方や考え方がこんなに違うのか」と改めて感じました。そして「スタディービジットは“人を知るビジット”だと思いました。そして人を知るたびに、自分の中に“軸”のようなものができていきました」とその意義を語ります。

スタディービジットの21日間は古谷さんに大きな成果をもたらしました。「世界をより良くするような活動にぜひ加わりたいです。将来やりたいことの物差しを見付けることができました。そしてこれから20年間ぐらいの道筋が見えてきました」と笑顔で話しました。

≪小木戸寿花さん≫ ただ教育をすればいいというものではない


▲障がい者施設を訪れた小木戸さん(左から3人目)
高校時代まで保育士になるのが夢で、現在は小学生にSDGsを教えるプロジェクトに参加している小木戸さんのテーマは「教育」でした。「教育が大切といわれているが本当なのか」という素朴だが、極めて根本的な疑問を追求するビジットになりました。



ラオスの現場が抱えている課題は想像をはるかに越えて深刻なものでした。一つ一つの課題と向き合いながら、自らの答えを模索する日が続きました。UNICEF(国連児童基金)ラオス事務所では、ラオス語が理解できない民族グループの子どもたちへの就学前教育についてレクチャーを受けるなど、厳しい現実を解決していく現場と向き合いました。
 
広島県出身の小木戸さんは、広島を離れて大学生活を送るようになったことで、平和教育を世界に広めて平和を構築したいとの思いを一層深めるようになりました。

ラオスは世界最大の不発弾汚染国です。ベトナム戦争中に米軍の激しい爆撃を受けて、いまだに8000万個の不発弾が残っているといわれています。小木戸さんは「不発弾の恐ろしさだけが記憶に留まることがないように、平和な未来につなげていこうという教え方や取り組みがぜひ必要です」と考えました。いまだに戦争の負の遺産の被害を受け続けているラオスを訪ねたからこそ、新たに見えてきたものがたくさんありました。

教育を軸に、さまざまな現場を見て話を聴く中で「国際支援や国際協力に携わってみたい」と思うようになりました。小木戸さんは「自分のやりたいことややるべきことが見えてきました。方向性と目標が見えてきたことが大きな成果です」と語りました。

≪福田和生准教授≫ 実践の場で磨いてほしいクリティカル・シンキング

学生たちを指導した福田准教授は今回のスタディービジットを次のように総括しています。

▲学生たちとミーティングする福田准教授(右から3人目中央)
訪問したことで今まで学べなかったことをいろいろと学ぶことができます。一方で、訪問するだけでは学べないこともたくさんあります。ただ、学生が想像できないようなことでも、現地を訪問して、実際に展開されているアクションを観察することで実感できることがあります。Learning to Know が具体化すると次第に違う景色が見えてきます。それがやがて Learning from Doing(することからの学び)へとつながっていきます。まさに Experiential Learning の理想形です。



スタディービジットで身につけてほしいと願っているのが“クリティカル・シンキング”です。入ってくる情報を精査し、その事案について自分なりに考えて、どういう解決策があるのかというところまで考え抜くことです。スタディービジットでは、シャワーのようにさまざまなことが降り注ぎ、頭がパンクしそうな経験の繰り返しです。さまざまなことを考えさせられる場面が次々と現れ、クリティカル・シンキングを磨いていくという時間を持ってくれたらと願っています。

自分で考える過程で“この先にはこんな道があるんだ”と気付くことが大切です。それだけでも大きな成果です。スタディービジットが、“考えるきっかけ”“行動するきっかけ”“研究するきっかけ”になるとうれしいです。

【お問い合わせ先】
関西外国語大学 広報部
電話: 072-805-2817(日・祝除く午前9時~午後5時)
E-mail: [email protected]


関西外国語大学

公式サイト https://www.kansaigaidai.ac.jp

▲協定大学のある国々の国旗が並ぶ国際交流センター前。学生たちは日常的に多文化に触れながら学んでいます

「GO FOR it! 語学の、その先へ。」
関西外国語大学は、世界55カ国・地域の432大学(2026年9月現在)に広がる海外ネットワークを活かし、年間約1,300人の学生を海外へ送り出しています。大阪府枚方市にある2つのキャンパスでは年間約1,100人の留学生を受け入れており、日常的な国際交流が行われています。

語学力をベースに、文化や政治、経済など「+α」となる多様な専門分野を学ぶ教育体制を整えています。学生個々人の興味・関心に応じた、米国公認会計士の資格取得をめざす教育プログラム「USCPA Pathway Program」などの多様な学修を展開。学生は語学の先にある専門性を身につけ、これからの時代と社会の要請に応える確かな力を育んでいきます。

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