李禹煥、チームラボ、ジュリアン・オピーら国内外18アーティストが、松本の名建築に集結

「マツモト建築芸術祭2026 ADVANCE」11月3日開催、浅間温泉エリアなど新たに4エリア・19会場へ拡大

李禹煥、チームラボ、ジュリアン・オピーら国内外18アーティストが、松本の名建築に集結


 マツモト建築芸術祭実行委員会(所在地:長野県松本市、実行委員長:齊藤忠政、総合ディレクター:おおうちおさむ)は、「マツモト建築芸術祭2026 ADVANCE」第2期を、2026年11月3日(火・祝)から12月13日(日)まで、松本市内19会場にて開催します。
 本展は「東アジア文化都市2026松本」のメインプログラムの一つとして位置づけられ、世界的な現代美術家・李禹煥、国際的アートコレクティブ「チームラボ」、英国の現代美術家ジュリアン・オピーをはじめとする国内外18アーティストが参加。会場も、これまでの中心市街地に加え、新たに浅間温泉エリアを含む4エリア・19会場へと拡大します。
 2022年の初開催から数えて5度目の一般公開となる本展を通じて、松本の名建築とアートが出会う、まち歩きの魅力をお届けします。


1. 芸術祭の背景
 松本市には、国宝「松本城」や「旧開智学校」をはじめ、なまこ壁の土蔵造りの建物、大正から昭和の活気を物語る看板建築など、日本の近代化を象徴する建築が数多く残っています。マツモト建築芸術祭は、これら〈名建築〉を舞台にアート作品を展示することで、建築とアートの対比・融合・共鳴による化学変化を街にもたらし、松本の活性化につなげたいという思いから、2022年に市内観光事業者らの有志によって始まりました。コロナ禍にもかかわらず初年度から延べ6万5,000人を動員し、以降も継続開催を重ね、現在では松本の冬を彩る芸術祭として定着しています。
 2026年は、「東アジア文化都市2026松本」の開催年にあわせ、「マツモト建築芸術祭2026 ADVANCE」として2期構成の特別版に再構築されました。2月から3月にかけて開催した第1期「映像アート祭」(松本市立博物館)に続く今回の第2期は、2022年の初開催から数えて5度目の一般公開となります。

2. 二期構成という新たな試み
 第4回となる2026年は、二期構成という新たな試みに踏み出しました。
 第1期「映像アート祭」(2026年2月~3月)は、表現手法を映像に限定し、会場も松本市立博物館の1会場に集約するという、これまでのマツモト建築芸術祭とは異なる試みでした。建築の個性や展示環境の差異をあえて均質化した一つの空間・同一条件のもとで、9アーティストの映像作品を展示。これまで〈周遊型〉では「場所との関係性」によって浮かび上がってきた作家の力を、あえて条件を揃えることで検証し、作家それぞれが持つ表現の強度や視点、作品同士の差異と響き合いを、より鮮明に浮かび上がらせました。
 今回の第2期は、この第1期で示された芸術祭の「現在地」を踏まえ、従来からのマツモト建築芸術祭の原点である〈まちなか周遊型〉のスタイルへと展開します。建築空間そのものと作品が応答し合う形式に回帰し、会場も19会場へと大きく拡張。第1期に参加した作家の一部を含む18アーティストが、それぞれ異なる会場で「個」の世界をつくり上げます。まち全体を舞台とする芸術祭として、松本の都市文化の魅力をより広い視点から提示します。

3. エリアの拡大
 これまでの3回(2022年、2023年、2024年)は中心市街地を中心とした展開でしたが、今回は『城下町エリア』、『旧六九商店街エリア』、『浅間温泉エリア』、『西エリア』と4エリアに分け、会場を拡大しました。浅間温泉エリアでは、これまで一般公開の機会が少なかった大正時代の私設図書館「松門文庫」なども会場に加わります。松本市内を広く周遊してもらうことで、松本という街をより深く体感していただき、これまで芸術祭になじみの薄かったエリアにも新たな人の流れを生み出します。
 また、本展は「東アジア文化都市2026松本」のメインプログラムの一つとして初めて位置づけられ、理念「PEACE & ARTS(芸術と平和)」を体現する事業として、世界的な現代美術家・李禹煥氏、アートコレクティブ「チームラボ」、英国の現代美術家ジュリアン・オピー氏など、これまで以上に国際色豊かなラインナップとなっています。

◾ 参加アーティスト(18アーティスト/五十音順)

稲葉友宏、井村一登、大垣美穂子、鬼頭健吾、佐々木修宏、佐藤雅晴、シシヤマザキ、ジュリアン・オピー、鈴木崇、チームラボ、中島崇、原田裕規、福井江太郎、本城直季、マイケル・リキオ・ミング・ヒー・ホー、村松英俊、米谷健+ジュリア、李禹煥

◾ 会場(4エリア・18施設・19展覧会/各五十音順)

【城下町エリア】9施設10展覧会
割烹松本館、かわかみ建築設計室(旧松岡医院)、旧司祭館、旧念来寺鐘楼、旧松本高等学校庭園、下町会館、ヒカリヤ文庫蔵、まつもと市民芸術館、松本市立博物館
【旧六九商店街エリア】3施設3展覧会
atelier m4 今町スタジオ、旧油三洋裁店、旧高松屋商店
【浅間温泉エリア】4施設4展覧会
旧浅間温泉芸苑組合(田辺薬品2階)、旧土産物店、松門文庫、松本本箱
【西エリア(歴史の里)】2施設2展覧会
旧松本区裁判所庁舎、旧松本少年刑務所独居舎房

※重要文化財 2施設(旧松本高等学校 本館・講堂、旧松本区裁判所庁舎)
 国登録有形文化財 3施設(割烹松本館、ヒカリヤ文庫蔵、かわかみ建築設計室)
 長野県宝 2施設(旧司祭館、旧念来寺鐘楼)

4. 今回のみどころ

◾メインビジュアル、米谷健+ジュリアによる塩の彫刻

歴史の里(旧松本区裁判所庁舎)では、米谷健+ジュリアが塩で制作した《最後の晩餐》を展示。長さ9mにもなる大きな作品で、本展のメインビジュアルにも起用されています。

◾ 国際的アートコレクティブ「チームラボ」が初参加

割烹松本館では、チームラボが江戸時代の絵師・伊藤若冲の代表作《鳥獣花木図屏風》と《樹花鳥獣図屏風》にみられる「升目画」技法をモチーフとした映像作品を展示します。会場となる鳳凰の間を埋め尽くす、太田南海の彫刻、金子嶺挙の天井画との競演も見どころです。

◾ イギリスの現代美術家ジュリアン・オピーが登場

まつもと市民芸術館では、韓国・釜山の海辺の人々を輪郭と色彩で立体化した彫刻シリーズ《Busan Walkers》を展示。「東アジア文化都市」の趣旨とも響き合う一作です。

◾ 李禹煥と福井江太郎、日本の伝統技術との対話

世界的に活躍する2人の美術家、韓国生まれの李禹煥と日本画の福井江太郎がそれぞれコラボレーションするのは、日本の浮世絵木版画技術を継承するアダチ版画研究所。江戸時代から続く伝統技術が現代作家との協働によって生み出す新しい木版画の世界をご紹介します。「作品とは何か」という、アートの根源的な価値観に切り込みます。

◾ 多彩なジャンルの個性豊かなアーティストによる多面的な展示

佐藤雅晴、シシヤマザキ、原田裕規、本城直季の4アーティストは、2月開催の第1期「映像アート祭」に続いての参加。同一条件下での映像作品から一転、今回はそれぞれの会場で「個」の世界をつくり上げます。このほか、初めてマツモト建築芸術祭に参加する作家や、開催を重ねるたびに関わりを深めてきた作家たちも、今回また新たな会場で新しい空間をつくり上げます。作品と場所が静かに呼応し合う瞬間にこそ、本芸術祭ならではの魅力が宿ります。松本で、ぜひその一つひとつに出会ってください。

◾ 浅間温泉、対照的な4つの建物から見えてくるもの

今回、初めて会場として加わった浅間温泉エリア。この温泉地には、性格の異なる4つの建物を選んでいます。旧浅間温泉芸苑組合は、かつて芸妓が稽古に励んだ場所。華やかだった温泉文化の残り香を今に伝えます。松本本箱は、老舗旅館の大浴場をリノベーションし、まるで湯船に浸かるように本と出会えるブックホテルとして注目を集める施設です。松門文庫は、大正期に建てられた私設図書館で、市民による保存活動が今も静かに続いています。そして旧土産物店は、空き家のまま朽ち果てる、現在の浅間温泉が抱える現実そのものです。
 栄華の記憶、再生への挑戦、守り継ぐ意志、そして朽ちていく現実。対照的な4つの建物は、いわば浅間温泉という土地の縮図です。大垣美穂子、鬼頭健吾、中島崇という作家たちが、それぞれの建物に向き合う今回の展示を通して、建物や地域が積み重ねてきた時間と、そこでアートに何ができるのかを、来場者の方と一緒に考える機会にしたいと思います。

5. 展覧会一覧

〈城下町エリア〉

割烹松本館×チームラボ
アートコレクティブ。2001年から活動を開始。アート、サイエンス、テクノロジー、そして自然界の交差点を模索している国際的な学際的集団。アーティスト、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家など、様々な分野のスペシャリストから構成されている。
かわかみ建築設計室×鈴木崇
京都府出身。1996年、アメリカのThe Art Institute of Boston写真学科を卒業。2001年から2002年まで、ドイツのデュッセルドルフ芸術アカデミーにてThomas Ruffクラス研究生の傍ら、Thomas Struthのアシスタントを務めた。
旧司祭館1階×李禹煥
韓国慶尚南道に生まれる。ソウル大学校美術大学入学後、1956年に来日。日本大学文学部で哲学を学ぶ。「もの派」を牽引した作家として広く知られている。1969年には論考「事物から存在へ」が美術出版社芸術評論に入選。2010年に香川県直島町に安藤忠雄設計の李禹煥美術館が開館。
旧司祭館2階×福井江太郎
東京生まれ。2003年、文化庁買上優秀美術作品に選出。2006年と2013年に紺綬褒章受章。2013年、岡田美術館に巨大壁画を設置。2022年、十三代目市川團十郎白猿襲名披露で祝幕制作。文化庁他、公立美術館等に作品多数収蔵。
旧念来寺鐘楼×シシヤマザキ
水彩画風の手描きロトスコープアニメーションを独自の表現方法として確立。CHANEL、PRADAや資生堂などのブランドのプロモーション制作を担当し、世界的に活躍。オリジナルアニメーションは国内外問わず数多くのフェスティバルで上映されている。
旧松本高等学校庭園×稲葉友宏
栃木県生まれの彫刻家。越後妻有アートトリエンナーレ「大地の芸術祭 2012」、新宿クリエーターズフェスタ 2015などに参加するほか、国内外で作品を発表する。目に見えない物事への想像力を喚起する、余白を大切にした彫刻表現を追求している。
下町会館×マイケル・リキオ・ミング・ヒー・ホー
ハワイ生まれ。東京を拠点に活動する広東・日系アメリカ人のアーティスト。2018年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で美術学士号を取得した後、平面から立体、そしてその中間に位置するような作品を制作し、鑑賞者と作品のあいだに起こるその場限りの対話を促す。
ヒカリヤ文庫蔵×村松英俊
静岡県生まれ。モノや道具など既製品の一部分を大理石などの石に置き換え、モノの一部が石化した、あるいは石がモノの形に物化したイメージの作品を制作する。生活の中にあるモノや道具の歴史に悠久の時を刻む。
まつもと市民芸術館×ジュリアン・オピー
ロンドンを拠点に活動する現代美術家。人物や風景を簡潔な線と鮮やかな色彩で表し、「歩く人々」をはじめ、絵画、彫刻、映像など多様な表現を通して独自の視覚言語を展開し、世界各地で作品を発表している。
松本市立博物館×本城直季
東京都生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業後、同大学大学院メディアアート専攻修了。実在の都市や風景をまるでジオラマ模型のように写し出す作品で広く知られる。2006年、写真集『small planet』で木村伊兵衛写真賞を受賞。




















〈旧六九商店街エリア〉

atelier m4 今町スタジオ×井村一登
光学機器や映らない鏡、魔鏡、黒曜石、回転液体鏡など、素材や技法を横断し、現代の科学・工業史から神話や祭祀まで、人と鏡の関係性の変遷を追う。近年は「ナルキッソスの救済」をテーマに、自己愛、自家受粉、単為生殖をめぐる作品を制作している。
旧油三洋裁店×佐藤雅晴
大分県出身のアーティスト。自ら撮影した日常風景を丁寧にトレースするロトスコープ技法で独自の制作を続け、国内外で高い評価を得るなか、長年の闘病を経て2019年に逝去した。
旧高松屋商店×原田裕規
山口県生まれのアーティスト。とるにたらない視覚文化をモチーフに、テクノロジーやパフォーマンスを用いて作品を制作している。近年は広島市現代美術館、長野県立美術館、日本ハワイ移民資料館などで個展を開催。TERRADA ART AWARD 2023でファイナリストに選出・審査員賞を受賞。









〈浅間温泉エリア〉

旧浅間温泉芸苑組合×鬼頭健吾
松本本箱×鬼頭健吾

フラフープやパラソルなど、工業製品を空間に充満させることにより作品化したり、近年は布や鏡などを建物の構造や自然および人工の光といった環境に接続、干渉する作品を発表している。ありふれた日常のもので現代社会を軽やかに批評する作家として国内外から高い評価を受ける。
旧土産物店×大垣美穂子
富山県生まれのアーティスト。愛知県立芸術大学卒業後、ドイツへ留学・現地で活動。2010年に日本へ拠点を移し、人体と宇宙をめぐる壮大なインスタレーションを国内外で展開している。
松門文庫×中島崇
東京出身の現代美術家。1994年、桑沢デザイン研究所卒業。2001年、ドイツ・ベルリンに拠点を移し制作を行う。現在は東京在住。2026年に下山芸術の森発電所美術館で個展。大規模な空間作品を美術館や芸術祭、ギャラリーなど屋内外、国内外問わず発表を続けている。









〈西エリア〉

旧松本区裁判所庁舎×米谷健+ジュリア
アーテイストユニット。環境問題や社会問題などをテーマに入念なリサーチを行い、独自の手法で美しくも不気味なものへと転換する作品は、インスタレーション、ビデオ、パフォーマンスなど多岐にわたる。近年は京都の農村で無農薬農業も営なみながら、グローバルに制作・展示を行なっている。
旧松本少年刑務所独居舎房×佐々木修宏
広島県生まれ、大阪府在住。日本鉄道写真作家協会(JRPS)会友。幼い頃から鉄道が好きで日本中のローカル線を旅する。現在は広告代理店に勤務の傍ら、鉄道をモチーフに距離感や時間などをテーマに写真を発表している。







7. アソシエイトプログラムも実施予定
 会期中は、19の展覧会に加えて、アソシエイトプログラムも実施予定です。総合ディレクター・おおうちおさむが、参加アーティストとざっくばらんに語り合うトークセッションでは、対話を通して制作背景や思考、創作に向き合う姿勢を引き出します。また、アーティストと直接触れ合い、ともに制作するワークショップも予定しています。作品を鑑賞するだけでなく、作家の言葉や手を通してアートに触れられる、本芸術祭の空気感を象徴する重要なプログラムです。
 詳細は公式サイトやSNSにて今後公開してまいります。

8. まち全体が、もうひとつの展覧会場
 コロナ禍で人々が家に閉じこもり、静まり返った松本の街に、もう一度賑わいを取り戻したい――マツモト建築芸術祭は、その思いから2022年に始まりました。会場となる名建築を目指して人が歩けば、まちにはおのずと人の流れが生まれます。コートを羽織り、思い思いのおしゃれをして歩く人々の姿もまた、まちに彩りを与える光景です。会場と会場のあいだの通りも、路地も、その全てが、もうひとつの展覧会場になる。この芸術祭が初回から変わらず大切にしてきたのは、そんな〈まち全体が展覧会場である〉という考え方です。
 松本が本格的な冬を迎えるこの季節に、今回も松本のまちいっぱいに人の流れをつくり、歩く人の姿でこの街に彩りを添えることの一役を担えるなら幸いです。

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