開館28年謝恩 横浜能楽堂「中締め」特別公演 第1回「芝祐靖の遺産」
雅楽演奏団体・伶楽舎を迎えて、古代の音色を現代によみがえらせた、芝祐靖の代表作2曲を上演。
中村恩恵の振付により、古代の復元楽器とコンテンポラリーダンスとの初コラボも。一期一会の舞台をお見逃しなく!
古代の音色を現代によみがえらせる「敦煌琵琶譜による音楽」
今回演奏される2曲のうちのひとつ、「敦煌琵琶譜による音楽」は、唐代末~五代頃(10世紀頃)のものとされる「琵琶譜」がもととなっています。約100年前に中国・敦煌で発見され、当時は解読不可能といわれていましたが、現代の雅楽の伝承を手掛かりに、芝祐靖が1986年~1996年にかけて復曲しました。
この作品は、パンパイプの形状をした「排簫(はいしょう)」や、竪型のハープの「箜篌(くご)」など、現代では伝承されていない古代の楽器のアンサンブルで演奏されます。これらはすべて、正倉院御物から復元されたもの。十数種類の珍しい楽器が揃う舞台は壮観ながらも、どこか懐かしく柔らかい音色が魅力です。
*こちらの動画で、芝さん本人が復元楽器「排簫」を演奏する様子や、古代の音楽の復元についてのお話を視聴いただけます。
今回のために中村恩恵が振付し、コンテンポラリーダンスと初コラボ
今回はさらに、この珍しい楽器が出演するのみならず、初めてコンテンポラリーダンスとコラボレーション。世界的に活躍するダンサー・振付家の中村恩恵が、今回のために「敦煌琵琶譜による音楽」に初めて振付し、気鋭の振付家・ダンサーの宝満直也とともに、復元正倉院楽器が並ぶ能舞台の空間に登場します。古代の息吹に、コンテンポラリーな感性が交わる、一期一会の舞台は必見です。
雅楽の調べを堪能できる、組曲「呼韓邪單于」も見逃せない
もう一曲は、雅楽組曲「呼韓邪單于(こかんやぜんう)」(1999)。前漢の時代の中国、匈奴の王・呼韓邪單于に嫁いだ美女・王昭君の悲話をもとに、歌曲付きの古典雅楽様式で作曲された作品です。
雅楽の現行曲に「王昭君」が存在することから、昭君の夫の名を曲名とし、「古典雅楽が失ってしまった詩情、色彩感、エネルギーなどの表現を取り戻す(※)」試みとして作曲したという意欲作。歌い手には、作曲した芝祐靖本人が初演時に指名した、山田流箏曲の下野戸亜弓を迎えます。(※ CD「呼韓邪單于」ブックレットより)
武満徹の雅楽曲「秋庭歌」の演奏でも評価の高い、現代作品も得意とする伶楽舎による、みずみずしい雅楽の調べを堪能できる作品です。
上演されるのは、築150年余の歴史ある能舞台
会場となる横浜能楽堂の本舞台は、築150年余となる能舞台を移築・復原したもの。関東地方現存最古の能舞台で、横浜市の有形文化財にも指定されています。関東大震災や戦災をくぐり抜けて残った数少ない能舞台のひとつで、数々の名人が舞った舞台には、古いだけではない、独特のたたずまいと存在感があります。
能舞台は、能・狂言を専用に演じるために長い年月をかけて洗練され、様式化された舞台。普段は能・狂言以外の芸能に使われることはあまりありません。この舞台で、今回限りの組み合わせが観られるチャンスをお見逃しなく。
今回の公演は、横浜能楽堂が大規模改修のため長期休館に入る前のシリーズ企画の第1弾。全5回にわたって、能楽だけでなく、琉球芸能、日本舞踊、声明など、様々な古典芸能の魅力が堪能できる、他ではなかなか観られない企画が目白押し。長期休館に入る前に、ぜひ一度足をお運びください!
【出演者等プロフィール】
芝祐靖(しばすけやす)
800年余り続く奈良系の伶人の家に生まれ、1984年まで宮内庁楽師をつとめた。1985年伶楽舎を創立し音楽監督となる。2009年旭日中綬章、2017年文化勲章受章。他受賞多数。日本藝術院会員。2019年83歳で永眠。
伶楽舎(れいがくしゃ)
芝祐靖が創立した雅楽演奏団体。1985 年の発足以来、現行の雅楽古典曲だけでなく、廃絶曲の復曲や正倉院楽器の復元演奏、現代作品の演奏にも積極的に取り組み、国内外で幅広い活動を展開。
下野戸亜弓(しものとあゆみ)
山田流箏曲演奏家。東京芸術大学音楽学部邦楽科卒業、同大学大学院音楽研究科修士課程修了。古典のみならず現代作品も初演し、邦楽の発声を基礎とした声楽の可能性を追求するなど幅広い活動を展開。
中村恩恵(なかむらめぐみ)
ダンサー、振付家。ネザーランド・ダンス・シアターに所属後、帰国し、新国立劇場バレエ団ほか多くの団体等に作品を提供。2010年芸術選奨文部科学大臣賞、2013年横浜文化賞受賞。2018年紫綬褒章受章。
宝満直也(ほうまんなおや)
ダンサー、振付家。2010年新国立劇場バレエ団に入団。古典作品に出演のみならず、コンテンポラリー作品ではソリストとして抜擢。同団退団後は、NBAバレエ団、大和シティー・バレエなどの作品で振付を行う。
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