【初代国立劇場さよなら特別公演】8月声明公演『長谷寺の声明』舞台芸術として声明を紹介し続けてきた初代国立劇場で最後の演目は“宙を舞う経典と圧倒的な大音声”!

2023年7月24日 月曜日 4:47 PM

仏教儀式において僧侶が唱える声楽・声明(しょうみょう)。 国立劇場では、従来儀礼として行われてきた仏教音楽・声楽の芸術的な側面に光を当て、日本の伝統音楽の一ジャンルとして「声明」を広く公開してきました。 現在、国内外の各地で声明公演が行われていますが、昭和41年(1966)の国立劇場開場記念公演以降、毎年継続して声明を紹介し、昭和48年には国際交流基金主催の43日間にわたる世界一周の演奏旅行が企画され、海外でも高い評価を得たこともあって、「声明公演」の魅力が一般に知られることとなりました。 本年10月末の閉場を控え、特に各芸能の集大成をご覧いただく 《初代国立劇場さよなら特別公演》 を8月から開催していきますが、その先頭でご紹介するのが『長谷寺の声明』です。 国立劇場開場記念公演として第1回声明公演で上演された演目が、真言宗豊山派(しんごんしゅう ぶざんは)による「大般若転読会(だいはんにゃ てんどくえ)」でした。初代国立劇場の声明の最終公演に、第1回公演と同じ演目を大劇場でご堪能いただきます。



大般若転読会とは



『大般若転読会』は、玄奘三蔵により訳された『大般若波羅蜜多経』六百巻を講讃(こうざん)・転読して、国土安穏(こくどあんのん)・除災招福(じょさいしょうふく)を祈念する法要です。

 「転読」とはお経の読み上げ方で、経題(きょうだい)・訳号(やくごう)・品号(ほんごう)を大音声で唱え、本文は読まずに『般若心経』の咒(しゅ)を誦(じゅ)する、あるいは大部分を省略して読み、折本の経本を空中に翻し開き流して最後に尾題(びだい)を唱えることで、一巻を十五秒ほどで読み上げます。
 日本では大宝3年(703)に初めて修され、和銅元年(708)から恒例化し、その後諸宗派で行われるようになりました。最初は六百人の僧侶が一人一巻ずつ真読(一字ずつ読み上げ)していましたが、折本で出版されるようになると、十二人で一人五十巻を転読するようになりました。大音声で瞬時に転読することで、災いの根源である悪魔を降伏する読経の威力を強めます。


音楽性も動きも味わえる法要



 法会の中心は、職衆による転読と、説草師せっそうしによる経の内容の説明・讃嘆である「講讃」を行うところにあります。長谷寺では更に、奠供(てんぐ)・二箇法用(にかほうよう)・後讃(ごさん)・神祇法楽(じんぎほうらく)等が加わり、音楽性に富んだ構成となっています。二箇法用の唄(ばい)・散華(さんげ)等、音を長く引く音楽的な部分、経釈(きょうしゃく)等の節をつけて語る部分、そして転読のように音も所作もダイナミックな部分といった、様々な要素が盛り込まれています。声明の音楽性や多彩な動きに、どうぞご注目ください。

総本山長谷寺が大劇場に


長谷寺式十一面観音菩薩三尊像 (通称 大画軸)
 本公演には、四季折々の花々が堪能できる「花の御寺」としても有名な総本山長谷寺と、真言宗豊山派の声明を支える迦陵頻伽聲明研究会の僧侶の皆様にご出演いただきます。諸悪の根源を払い、人々の平和と幸せを願う、大迫力の「降魔(ごうま)の法会」を大劇場舞台に再現します。
 舞台上には、長さ16mの「長谷寺式十一面観音菩薩三尊像(本尊十一面観音御影/大画軸とも)」の“等身大”レプリカを使用する予定です。現在の長谷寺の本尊は、天文7年(1538)に再興された、国宝・重要文化財の木造彫刻の中でも国内最大級のものですが、明応4年(1495年)、火災に遭った本尊の復興のための設計図として、興福寺の絵師・清賢(せいけん)が描いたとされる国内最大級の掛け軸(県指定重要文化財)を、特注のスキャン装置でデジタル化して複製されました。
 右手に数珠と大きな錫杖を持ち、左手に水瓶を持って方形の磐石の上に立つ観音菩薩が、国立劇場での法会(公演)を見守ります。
 また、公演当日の大劇場ロビーには、さらに3分の1ほどに作られた同画軸のレプリカを展示する予定です。法会の世界を間近でお楽しみいただけるでしょう。





豆知識
長谷寺(はせでら)は、奈良県桜井市初瀬にある真言宗豊山派の総本山。創建は奈良時代、『枕草子』『源氏物語』『更級日記』など多くの古典文学にも登場する古刹です。国宝の巨大な本堂には本尊・十一面観音菩薩像が安置されています。鐘楼や長い登廊も重要文化財。また、豊かな自然に恵まれ、春の桜や牡丹の名所として有名です。
真言宗豊山派総本山長谷寺 全景(奈良県桜井市)


初代国立劇場さよなら特別公演
令和5年8月 第62回声明公演



真言宗豊山派総本山
長谷寺の声明
(はせでらのしょうみょう)


解説・お話
国立劇場の声明公演を振り返る

二箇法用付大般若転読会
(にかほうようつきだいはんにゃてんどくえ)
上堂(じょうどう)
三礼(さんらい)
奠供(てんぐ)
法用(ほうよう)
説草(せっそう)
神祇法楽(じんぎほうらく)
三礼
退堂(たいどう)


出演=真言宗豊山派総本山長谷寺、迦陵頻伽聲明研究会



主催=独立行政法人日本芸術文化振興会
さよなら記念協賛=住友生命保険相互会社 東芝ライテック株式会社 (五十音順)





令和5年8月5日(土)
午後2時開演(午後4時10分終演予定)※休憩あり
国立劇場 大劇場 (〒102-8656 千代田区隼町4-1)

【料金[税込]】
1等席7,000円 2等席6,000円 3等席5,000円
(学生1等席4,900円 2等席4,200円 3等席3,500円)
※障害者の方は2割引です。(他の割引との併用不可)
※車椅子用スペースがございます。

チケットのお求めは
国立劇場チケットセンター 0570-07-9900
https://ticket.ntj.jac.go.jp/


国立劇場について
日本の伝統芸能の保存及び振興を目的として昭和41年(1966)に開場。外観は奈良の正倉院の校倉造りを模している。大劇場・小劇場・演芸場・伝統芸能情報館を備え、多種多様な日本の伝統芸能を鑑賞できる。初心者や外国人を対象とした解説付きの鑑賞教室も開催している。

所在地:東京都千代田区隼町4-1
03-3265-7411(代表)
https://www.ntj.jac.go.jp/


「未来へつなぐ国立劇場プロジェクト」

明治以来の国立劇場設立構想からおよそ100年。
伝統芸能の保存と振興に取り組むため、昭和41年国立劇場が誕生しました。
そして半世紀。
これは国立劇場が未来へ向けて新たな飛躍を目指す一大プロジェクトです。

特設サイト
https://www.ntj.jac.go.jp/future/

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