能登半島地震の被災地に「みんなの家」

2024年11月20日 水曜日 11:18 AM

珠洲市・輪島市・能登町に計6棟、地元有志とともにつくる、復興を見据えた持続可能な「憩いの場」

能登半島地震の被災地に「みんなの家」
珠洲市で計画中の「狼煙のみんなの家」

「狼煙のみんなの家」が日本財団の助成採択により2025年建設へ
今年1月に発生した「令和6年能登半島地震」は、奥能登を中心とする地域に甚大な被害をもたらしました。10か月以上が経過し、復旧は段階的に進んでいるものの、9月の豪雨災害で大きな被害を受け、さらに時間を要す見込みです。

そのような状況で、インフラに頼らず自らの力で復旧を行い日常生活を再開した方がいたり、廃材を利用した薪で銭湯を再開した若者がいたり、自宅の一角で仮設風呂を提供する住民もいました。ある集落では自主的に復興ビジョンを協議していたと聞きます。こうした人々のたくましさは、私たちに復興への希望を感じさせてくれるものでした。

HOME-FOR-ALLは地元の人々の力と想いを手がかりとして、被災者の憩いの場になるとともに、彼らの将来に寄り添う「能登みんなの家」プロジェクトをスタートしました。現在、珠洲市、輪島市、能登町の3市町において、設計者と運営者が一体となって計6棟の「みんなの家」の計画を進めています。

そのうち「狼煙のみんなの家」(運営:NPO法人奥能登日置らい)が、日本財団の「みんなの憩いの場プロジェクト」に採択され、工事がまもなく着工する見込みです。ほか5棟についても同様に申請が進められており、採択されれば2026年頃までのオープンが目標になります。

能登のこれからを見据えた3つの指針
設計にあたっては、能登にふさわしい「みんなの家」のかたちとして、大きく3つの共通の指針をかかげています。
1.地元の人の想いをかたちにする
「みんなの家」を運営するのは、自身も被災者である有志の方々が集う団体です。今なお日常生活すらままならない状況のなかで、能登の未来をみすえた活動をはじめています。個性ある運営者のビジョンを設計に反映することで、その地域で中長期にわたって活用され、地元の人々の手で成長させていけるような柔軟な「みんなの家」を目指します。
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例:馬と触れ合う場、漁業団体の活動の場、公園のようなまちづくり、囲炉裏やかまどのある食堂、大きなキッチン、お風呂、コワーキングスペース
2.持続可能な自立した建築にする
豊かな自然環境のなかに集落が点在する能登半島では、震災以前よりメガインフラに依存しない自給自足生活の土壌があります。能登における「みんなの家」は災害に強く、自然環境を味方につけるようなオフグリッドな施設計画とし、その価値を発信する場になることを目指します。またその地域独自のなりわいを担う拠点にもなることで、自立した運営体制をつくります。
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例:コンポストトイレ、太陽光発電、井戸水の活用、薪の活用(薪ストーブ・薪風呂)、瓦による環境負荷低減
3.能登の文化を未来に継承する
能登ではそこで育まれてきた特色ある文化があり、地元の人々の多くはそれに誇りをもっています。被災によって建物は壊れ、産業も存続の危機に瀕していますが、「みんなの家」はそうした文化を後々に伝えていく場を目指します。建物に用いる材料の選定や、既存施設や地域活動との連携によって、個性豊かな「みんなの家」をつくります。建物の意匠や用いる素材、既存の施設の利用や連携、運営に反映させ、個性豊かなみんなの家を目指します。
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例:救出した能登瓦の再利用、下見板貼り、番屋の保存活用、里山の食文化の継承


地元住民とのディスカッション。珠洲市狼煙町では自主的に復興ビジョンの検討が行われてきた

薪や井戸水を利用した仮設風呂や洗濯場の視察。珠洲の地元住民が被災直後から無償提供している

黒瓦や下見板貼りの建物、入り組んだ地形と海岸線による能登らしい風景



珠洲市、輪島市、能登町に特色ある6棟を計画中



1.狼煙のみんなの家能登半島の最奥地で、道の駅と仮設住宅の隣接地。地元で愛される2本の桜の傍に計画。屋根はリサイクルした能登瓦、外壁は下見板貼りで、能登で親しまれてきた建築の諸要素を継承しながら未来に向けたみんなの家らしい建築を目指している。震災以前に地元住民が集っていた神社の仮宮や、集会所の機能をここに集約し、祭事や地域活動の拠点として、また人々が集う食堂や飲み屋にもなり、地元の人と狼煙に訪れる人が未来について語りあえるような心地よい場所をつくる。
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運営:NPO法人奥能登日置らい
設計:クライン ダイサム アーキテクツ






2.鉢ヶ崎のみんなの家現在多くの仮設住宅が建設されているレジャー施設が集まる地域、その一角にある珠洲ホースパークの敷地内に、馬を通じて互いに心身をケアする空間とした、人々が集まるきっかけとなる居場所を計画している。仮設住宅の住民や地域住民、復興支援者や復旧工事に携わる方々などが立ち寄れる食堂や、馬の様子を眺めながら学びに集中できるワーキングスペース、こどもの遊び場にもなる小上がり、屋外のシェアキッチンが点在し、その間を屋根のある半屋外空間がつなぐ。オフグリッドを推進する一般社団法人みんなの馬が運営する。
運営:一般社団法人みんなの馬
設計:EIKA studio + o+h + 伊東豊雄建築設計事務所






3.大谷のみんなの家大谷町は外浦に面した能登半島のなかほどに位置する、黒瓦のおだやかな町並みが印象的な海沿いの町である。目的がなくてもみんながふらっと立ち寄れるような場所、そして隣接する小中学校との連携も考え、様々な催しや野菜の即売所等ができるような充実した半外部空間が求められているます。この地域に長く続いてきた歴史や文化を次世代に継承し、さらに豊かなものにできるようなみんなの家にしたいと考えている。
運営:NPO法人外浦の未来をつくる会 ※法人設立準備中
設計:近藤哲雄建築設計事務所






4.飯田のみんなの家商店街の中心部に計画。寺子屋や銭湯を運営する若手移住者が主体となり、学びやまちづくりに取り組む団体が運営。周辺のプレイヤーと連携しながら、「公園のようなまち」としての復興をめざす拠点となる。建築はラフな仕上げとし、運営しながらDIYなどで発展させていく。夜間にはぼんぼりのように周囲を照らし、まちのシンボルになる。
運営:NPO法人ガクソー
設計:PERSIMMON HILLS architects






5.深見のみんなの家輪島市中心部から白米千枚田に続く国道249号沿いに、7つの集落が広がる深見町は、農業・漁業・林業といった人々の生業と自然の均衡が生み出す、里山里海の風景が美しい町である。地震や豪雨によって失われた風景を再生するため、生業を創出し、豊かな生活文化を継承する「竈と囲炉裏のある食堂」と「地域をケアする浴場」を計画している。欅や橡の林業で栄えた集落の記憶を残すために、解体家屋の古材の活用も検討している。
運営者:NPO法人紡ぎ組
設計者:式地香織建築設計事務所+松田彩加建築設計事務所






6.鵜川 みんなの番屋敷地は石川県能登町南部、漁業で栄えてきた鵜川町のまちの中心に位置する。鵜川町には約300世帯の人々が住んでいましたが、震災により70~80世帯が仮設住宅に移ることを余儀なくされた。鵜川のみんなの家は、漁業というまちの生業に着目し、鵜川町ならではのみんなの家とすべく、魚をテーマした食堂を通して再びみんなに開かれたコミュニティの場をつくっていきたいと考えている。震災を機に立ち上げた「まちづくり推進委員会」と建築家が一緒になって復興のシンボルをつくる。
運営者:一般社団法人能登を紡ぐ ※法人設立準備中
設計者:工藤浩平建築設計事務所
アドバイザー:妹島和世



●実施体制
●プロジェクトメンバー
-設計担当:
クライン ダイサム アーキテクツ(狼煙のみんなの家)
EIKA studio + o+h + 伊東豊雄建築設計事務所(鉢ヶ崎のみんなの家)
近藤哲雄建築設計事務所(大谷のみんなの家)
PERSIMMON HILLS architects(飯田のみんなの家)
式地香織建築設計事務所+松田彩加建築設計事務所(深見のみんなの家)
工藤浩平建築設計事務所(鵜川 みんなの番屋)

-プロジェクトコーディネーター:吉川優子(クライン ダイサム アーキテクツ)
-運営コンサルタント:松村拓也
●連携自治体
珠洲市、輪島市、能登町
●連携団体
瓦バンク、能登復興建築人会議
●今後の動き
2024年8月~ 基本設計、実施設計、運営法人設立準備
2024年10月~ 狼煙町のみんなの家着工、ほか順次着工
2025年4月~ 運営準備、ワークショップ
2026年春頃~ 順次オープン
●「みんなの家」とは?
「みんなの家」は、2011 年の東日本大震災を受けてはじまったプロジェクトです。被災地で家を失った人々のために、建築家と住民が対話を重ね、人々が集まり、ともに居心地よく過ごせる、もうひとつの家を目指してつくられました。その活動は自治体や全国の企業、団体の支援によって広がり、東北では16 棟、地震や水害に見舞われた熊本では、規格型を含む約130 棟以上が建設されています。

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■団体概要
法人名:特定非営利活動法人HOME-FOR-ALL
理事長:伊東豊雄
所在地:〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町3-10-1
HP:https://www.home-for-all.org/

▼本リリースについてのお問い合わせ
メール:info@home-for-all.org(担当:事務局 西尾)

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