
ライター:今世野頭一 撮影:ゆうばひかり
ロックンロールがいま動いている。“やばい”とか”きている”とかではなく、動いている。伝説や昔の音楽ではない、いまのロックンロールだ。中でも暴動クラブに興味を惹かれた。
7インチレコードとCDのみのリリース展開でオリコンのランキングに入り、昨年のタワレコメンアワードでは「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」に輝き、メジャー・デビュー前にbounceの表紙に大抜擢された。そして驚くべきごとにCDショップ大賞2年連続入賞!現代の音楽シーンに強烈な一撃を食らわせた。この快進撃、目立たないわけがない。だからこそ、暴動クラブのファーストツアーのファイナル、これは絶対に観ておきたいと思い、会場である代官山UNITへ向かった。

最新アルバム『暴動遊戯』のオープニング『ドライブ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』からショーがはじまった。平均年令22才、煌びやかな衣裳とメイクから放つロックンロールのフェロモンがたちこめる。続けてインディー・デビュー・7インチシングル『暴動クラブのテーマ』、メジャー・デビュー・アルバムから『ラブジェネレーター』『ダリア』へ。チューニングのインターバルを挟み、BSよしもとでライブ映像をよく見た『くだらない時代に唾を吐け』から『Feel So Good?』まで一気に4曲、激しくも狂おしい渦を巻き起こした。
チャーミングでグラマラスな佇まいに退廃的なムードが漂い、リードVoの釘屋玄が人を寄せつけない強烈なカリスマ性を放つ。日本人にはめずらしく、ブルースロックのために生まれてきたような声でワイルドにぶっきらぼうに歌う姿は、ロックンロールの悪魔と踊っているように映る。
釘屋はワンマンライブ前日、丸の内COTTON CLUBで行われたちわきまゆみ40周年ライブ にゲストVoとして出演(4月にリリースされるちわきまゆみのニューアルバム『Remix-Remodel』に暴動クラブとして参加している)。2曲歌った中の1曲が 70年代のSSW ティム・ムーアのカバーで、ベイシティ・ローラーズのヒット曲としても有名な「ROCK’N’ROLL LOVE LETEER」。ブルースが入っていないメロディアスなロックンロールソングを、パンクやUKやロック的な装飾を混ぜることなく、しなやかにポップに軽やかに歌った。驚いた!まるで人生のスイッチが入れ替わったかのように悪魔と踊っている。ちわきまゆみは80年代にこの曲のカバーを発表しているが、この場面に持ってくるセンスは流石!釘屋玄にしか表現できないポップを覚醒した。

ショーの中盤でバラッド『いとしのクロエ』、レゲエの『FIRE』の後に、井上富雄プロデュースでシングルにもなった『撃ち抜いてBaby, 明日を撃てLady』を披露。ロックンロールバンドという文脈にはあまり類を見ない、ミディアムの歌モノだ。このようなタッチの曲をできるのが暴動クラブの”粋”であり、さらにモータウン・スタイルの『ひまつぶし』、そしてヴェルヴェッツのカバー『White Light/White Heat』とカラフルなサウンドの虹をかける。このパートはドラマーである鈴木壱歩の力量が発揮されている。けっしてドラムが際立つ曲ばかりではないのだが、だからこそグルーヴの本質が問われる。特に『撃ち抜いて~』のヴォーカルをうしろからしっかり支えるドラミングは、ダイナミクスとともに細部まで練られた構成力に脱帽する。ついこの前、メジャーデビューしたとは思えないほどの豊かなバリエーションに、鈴木壱歩の音楽的バックボーンの確かな”本物”を感じる。

ニューアルバムに収録されたミディアムのライフソング『生活』がショーの流れを変える。釘屋玄の歌詞が心に届く。
“ポストには 現実ばっか ぜんぶ破り捨てよう
そして 腹立たしくて愛おしい 世界を手に入れたい
あの日のこととか忘れたし
地下鉄の駅はずっと 息が詰まるから
あぁ 君を見つけらんないって 言い訳ばかり
寂しくなるのはきっと ゆうやけのせい
柄にもない言葉でベイビー この世界も悪くないって 言えたらいいのに
揺れる街灯みつめサタデーナイ ただ風になびいてるだけ
しけてる今日にグッバイマイラブ 風に誘われるあるがままに
まぼろしみてた逆さまの俺に 答えなんかいらないさ
君みたいな 歌をきいた あれはいつだっけ?
やけになつかしくって気がついた ねぇ今何時?
寂しいフリして 歩く トーキョーのストリート
やるせない 気持ちを ベイビー 行き止まりの壁に向かって叫びたいけど
そんでいつものようなサタデーナイ ただ風を嘆いてるだけ
鈍感な日々にグッバイマイラブ 風に誘われてゆくままに
夢をみてる 気がしてた俺に 答えなんかいらないさ”
ロックンロールバンドのライフソングには悲しみが伴っている。聴いていて、胸がしめつけられるようなことがある。ライブで泣いてしまうこともある。奥にしまいこんだ哀しみや寂しさが心のドアを蹴破って溢れ出てくる。ロックンロールは生き方であり、生活だ。

いよいよショーはクライマックスへ!やはり最新アルバムから『抱きしめたい』。歌が際立っているこの曲はベースの城戸”ROSIE”ヒナコが書いている。それまでの楽曲群とは異なる正統派Jポップで、一回聴いたら口づさめる秀逸なリリックとメロディーを、暴動クラブはロックとしてオーディエンスに差し出している。このあたりのセンスは作者である城戸の狙いなのかもしれない。髪を振り乱しながらギターのようにベースを弾く城戸の姿からは想像できないほど、クールでありながら大衆性をも獲得している。

そのままハードなアップテンポのハードな曲が続き、ラストはスケールの大きなロックンロールナンバー『シニカル・ベイビー』へ!夢を観ることもままならない真っ暗い世界で、いまこんなロックンロール・ナンバーを待っていた。何者にもどんなことにも邪魔されないロックンロールの異次元へ誘う。それは何よりマツシマライズのギター・プレイに寄るところが大きい。ロックンロールのバンドのファイナル・ナンバーはギターのリフ、ソロで決まる。華麗で扇動的で劇場型のマツシマライズは新しいギター・スターの可能性を秘めていて、今夜は見事にそれが開花した。ギター・ヒーローではなくギター・スターであり、その道は彼の敬愛するジミー・ペイジに通じているように感じる。
アンコールはマツシマのギターによるインスト『Voodoo Rag』をイントロダクションに『恋におちたら』。メンバー全員が学生服で演じたMVが印象的なラブソング。ひと足早いバレンタイン・プレゼントのようなロマンティックなナンバーだ。1950年代、ロックンロール音楽はダンス音楽であり、スローナンバーは恋人たちの時間だった。継承はエネルギーであり、更新である。バトンを持ったバンドたちが脱皮をしながら、今夜も歌っている。
MCでは今週末の選挙に行こうと呼びかけ、『ハニー』へ突入!会場中が明るくなる“武道館状態“となった。『抱きしめたい』同様、城戸“ROSIE“ヒナコによるリリックが、信頼や真実が崩されていく世界の中に確かな一筋の光を照らしてくれる。そいつははっきりとロックンロールの未来を照らしている。
ダブルアンコールはインディー・デビュー・アルバム『暴動クラブ』の1曲目『とめられない』。メジャー・デビュー・アルバムの1曲目ではじまり、インディー・デビュー・アルバムの1曲目で終わるロックンロールショー。なぜだか終始、釘屋玄がジム・モリソンとオーバーラップした。
“知っていることと知らないことがあり、その間に扉がある“ -ジム・モリソン
もう誰も彼らを止めることができない。暴動クラブは向こう側へ突き抜けた!
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