【開催報告】「岐阜の居場所づくりを、ひらく」~医療・福祉・教育と地域のあいだにある、居場所を考える~

2026年3月31日 火曜日 3:16 PM

家庭でも学校でもない“第三の居場所”を地域につくる。岐阜の実践者3団体が事例共有

【開催報告】「岐阜の居場所づくりを、ひらく」~医療・福祉・教育と地域のあいだにある、居場所を考える~


2026年3月19日に、オンラインとのハイブリッド形式による成果報告会「岐阜の居場所づくりを、ひらく」が開催されました。一般社団法人サステイナブル・サポートが主催した本イベントには、会場に約20名、オンラインでは約50名の申し込みがあり、居場所づくりへの関心の高さがうかがえました。本記事では、岐阜市内で異なるアプローチから「居場所」をひらいてきた3者の実践報告と、運営のリアルな課題や展望について語り合ったクロストークの模様をお届けします。

「なぜ今、居場所なのか?」ー イベント開催の背景




イベントの冒頭、主催であるサステイナブル・サポート後藤から、本日の開催趣旨が語られました。同法人は、就労困難を抱える若者や、発達障害のグレーゾーンにあり既存の制度のはざまに陥りやすい人々への就労支援からスタートしました。しかし、「就労の枠組みだけでは支えきれない人たちがいる」という課題に直面し、若者のための「居場所(サードプレイス)」の運営を続けてきました。
居場所づくりを実践する中で、そのあり方の多様性や、運営面での難しさを痛感したと言います。本イベントは、単なる成功事例の共有にとどまらず、医療、福祉、教育といった異なる専門領域から地域に開かれた居場所を運営するゲストを招き、それぞれの実践を交えながら「これからの岐阜に求められる居場所とは何か」を参加者とともに考える場として企画されました。

目的がなくても立ち寄れる「若者の安心基地」づくり(ぎふキャリアステップセンター)

最初は、サステイナブル・サポート渡辺から働きづらさを抱える若者向けのまちなかサードプレイス「ぎふキャリアステップセンター(通称:ぎふキャリ)」の2025年度の成果報告が行われました。
「見えない孤立」を防ぐ多機能なセーフティネット ぎふキャリは、独立行政法人福祉医療機構(WAM)の助成金を活用し、岐阜市の柳ヶ瀬商店街に開設された15歳から35歳までの若者を対象とした無償の居場所です。予約不要で目的がなくてもふらっと立ち寄れる「安心基地」として、PCや書籍、ゲーム、Wi-Fiなどを完備しています。既存の公的支援には認知度の低さや、自発的にSOSを出せない若者がこぼれ落ちてしまうという課題があり、まずは「食」と「居場所」を入り口とした多面的な関係構築が不可欠であるという背景から運営されています。

今年度は物価高騰の影響もあり、新たな切り口として手作りのおにぎりと味噌汁の「軽食提供」を開始しました。食を通じて自然なコミュニケーションが生まれ、参加型の調理イベントも交流の場として機能しています。今年度の実績(2026年3月6日時点)として、登録者59名、サードプレイス参加延べ人数495名、食事提供延べ人数158名を記録しました。

4つの利用者モデルと提供価値 利用者のニーズは多様であり、ぎふキャリでは利用者を4つのモデルに分類して支援を行っています。
- 入口・初期接点型:他の支援に繋がっていない無業・学生などが、外出の「最初の一歩」として利用。
- 併用・伴走型:他の就労支援機関と併用し、活動のモチベーション維持や気持ちの整理を行う「潤滑油」として利用。
- コミュニティ定着型:高頻度で来所し、立場を抜いた友人関係を築き、交流を楽しむ層。
- 社会参加拡張型:回復期にあり、利用者同士を繋ぐ役割を担うピア(仲間)的な存在。

ぎふキャリの提供価値は「居場所」「就労支援」「食糧支援」の3つの視点が相互に作用している点にあると語られました。無条件の受容による「所属感」が基盤となり、食糧支援が繋がりを広げ、最終的に社会参加への一歩手前を支えるという好循環を生み出しています。今後の課題としては、助成金に依存しない安定的な財源の確保や、ニーズに応えるための支援体制の拡充が挙げられました。

「ちょっとした企て」が子どもを変える、10代の居場所(ヒトノネ)

続いて、一般社団法人ヒトノネの代表理事・篠田花子氏より、子どもたちの放課後を支える居場所づくりの実践について報告がありました。

苦しさが見えづらい子どもの育ちを支える ヒトノネは2018年に創業し、「共に育ち合う社会」を理念に掲げ、学童保育や放課後等デイサービス、個別指導塾などを展開しています。特に近年は、10代の子どもたちが抱える「貧困と格差」「孤独感」に焦点を当てています。調査によると、約4割の中高生が「放課後に行く場所がない」と感じている現状があり、発達障害や不登校、ヤングケアラーなど、苦しさが見えづらい子どもたちが安心できる場所が強く求められています。

そこでヒトノネは、中高生のアート活動と居場所「クリエイターズクラブ」や、美濃加茂市での「ユースセンター」の運営を始めました。美濃加茂市の拠点には週2回の開催で毎回平均13.5人が集まり、卓球やおしゃべり、食事など思い思いの時間を過ごしています。

「ちょっとした企て」が引き出す子どもたちの変化 篠田氏が強調したのは、居場所の中で行われる「ちょっとした企て(プロジェクト)」と、地域の人々との交わりが子どもたちを大きく変化させるという点です。 例えば、ヒトノネで出会った中高生が「ホシノネ」という音楽ユニットを結成し、そこへ地域の映像クリエイターが関わることでプロモーションビデオの制作へと発展し、子どもたちの自信に繋がりました。また、「バーベキューがしたい」という声から、子どもたち自身が助成金の企画書を書き、森林文化アカデミーの専門家と連携して1泊2日の森キャンプを実現させました。この成功体験と濃密なコミュニケーションを経て、不登校だった中学生が自らの意思で登校を再開するなど、目覚ましい成長が見られたそうです。

また、近隣の福祉施設「いぶき福祉会」や、今回の会場である「カムカムスワロー」と連携し、子どもたちが居場所の看板づくりに挑戦したり、地域のお祭りに参加したりと、「顔の見える関係性」を広げていく取り組みの重要性も語られました。

「食べる」楽しみを諦めない、食で繋ぐコミュニティ(カムカムスワロー)

3人目のゲストは、近石病院の理事であり歯科医師の近石壮登氏です。「食べる」を通じて医療と地域を繋ぐコミュニティスペース「カムカムスワロー」の挑戦について語られました。

医療だけでは解決できない「食体験」の課題 近石氏は、摂食嚥下リハビリテーションを専門としています。高齢化に伴い、嚥下障害(飲み込みの障害)の可能性がある人は国内に約1000万人いると推計され、岐阜市だけでも約3万5000人に上ります。しかし、通常の医療・介護の枠組みでは「安全に栄養を摂取すること」が目標となりがちで、ペースト状の食事が提供されることが多く、食べる楽しみが失われてしまう現状があります。

「医療が支えられるのは、食べる機能という入り口にすぎない。本当に大事なのは『誰と、どこで、何を食べるか』という食体験そのものだ」と近石氏は指摘します。

「食べる」を起点に地域と繋がる この課題を地域とともに解決するため、近石病院の隣接地に開設されたのが「カムカムスワロー」です。嚥下食(柔らかい食事)が提供できるカフェとして、障害のある方もない方も、同じテーブルで美味しい食事を楽しめる空間を創り出しました。

活動はカフェの運営に留まらず、がん治療中の悩みを語り合う「がんカフェ」や、高校野球部の食トレ支援、地域の飲食店への嚥下食メニューの普及活動にまで広がっています。さらには、善光寺との連携イベントや、長良川温泉の旅館、NEXCO中日本とコラボレーションし、嚥下障害のある方の旅行体験をサポートするなど、地域全体を巻き込んだ展開を進めています。食べることを起点に、医療の外側にある不安や孤立を地域の繋がりで支える「関係性の基盤」として、カムカムスワローは大きな役割を果たしています。

クロストーク:居場所の価値と今後の展望




後半は、サステイナブル・サポート後藤の進行のもと、登壇者3名によるクロストークが行われました。

居場所における「支援」の距離感と対象設定 最初のテーマは「居場所で大事にしていること」です。篠田氏は「いつでも戻ってこれる場所であること」と「子どもを評価せず、利害関係のない立場で声を聴く機能」を挙げました。後藤からは「支援者の顔をしないこと」を意識し、若者に対して介入しすぎず、見守る姿勢を大切にしていると共感の声がありました。近石氏も、医療者はつい「おせっかい」を焼きたくなるが、押し付けがましくない「余白」を残すことが重要だと語りました。

「誰に対して場所を開くか」という対象設定の難しさも議論されました。ヒトノネは中高生と小学生で空間や時間を明確に分けており、ぎふキャリも若者支援という目的から35歳という年齢制限を設けていますが、実際には線引きに悩む場面が多いとのことです。一方でカムカムスワローは、「障害の有無に関わらず食事を楽しめる」という明確なコンセプト(核)を持つことで、多様な市民が混ざり合う空間を実現しています。

運営を持続するための「財源」と「人材」の壁 運営面における最大のハードルとして、3者共通で挙げられたのが「財源の確保」と「人材の確保」です。 カフェの売上や助成金だけでは事業として成立させることが難しく、企業からの寄付や多角的な資金調達が求められます。また、特に中高生向けの居場所は夕方から夜間にかけて開所するため、適切なスキルを持つユースワーカーをその時間帯に配置することの困難さが篠田氏から語られました。こうした収益性の低いセーフティネット事業を持続させるためには、行政との連携やサポートが不可欠であるという認識で一致しました。

これから居場所を始める人へ、そして未来へ これから居場所づくりを始めたいと考える人へのアドバイスとして、篠田氏は「身の丈に合った形で、小さく始めること」を提案しました。いきなり大きな場所を借りるのではなく、協力者を少しずつ増やしていくことが継続の鍵だと言います。近石氏は「繋がりを作ること」を強調し、自ら地域のあらゆる場に赴き「手裏剣のように名刺を配った」という立ち上げ時のエピソードを披露しました。

今後の展望として、近石氏は嚥下食の文化を岐阜から他地域へ展開する仕組みづくりを、篠田氏は「1つの中学校区に1つの居場所」という理想を掲げ、そのための人材(ユースワーカー)育成に注力したいと力強く語りました。

まとめ 最後に司会の後藤から、「居場所づくりは、孤立しがちな人たちに優しさを向けるだけでなく、それを実現するための緻密な設計や構造が必要である」という言葉で締めくくられました。医療、福祉、教育の枠を超え、地域の人々が有機的に繋がり合う「顔の見える関係」こそが、これからの社会における真のセーフティネットになる。参加者にとって、地域社会のあり方を問い直す、非常に有意義な成果報告会となりました。





一般社団法人サステイナブル・サポート
私たちが目指すのは、『誰もが自分らしく生きることのできる社会』

就労支援を中心に、一人ひとりの「自分らしさ」に寄り添い、「働く」を通じて自己理解や可能性を広げ、未来への一歩を踏み出すためのサポートを行っています。
誰ひとり取り残さない支援と予防的アプローチを大切にし、差別や偏見のない地域社会づくり、そして多様性(ダイバーシティ)の推進にも取り組んでいます。

【主な事業】
・就労移行支援・就労定着支援・就労継続支援B型事業所の運営
・就労選択支援事業、雇用相談援助事業、リワーク支援の実施
・就職活動に困難を抱える学生及び若者のキャリア支援プログラムの企画・運営
・岐阜市WORK!DIVERSITYプロジェクト実証化モデル事業の運営・実施
・岐阜県若者サポートステーション事業の運営・実施
・岐阜県委託伴走型ひきこもり支援事業の実施
・障害啓発講演会、ダイバーシティ啓発イベントの企画・運営

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<会社概要>
法人名:一般社団法人サステイナブル・サポート
所在地:岐阜県岐阜市長住町2丁目7番地 アーバンフロントビル3階
代表理事:後藤 千絵
設立:2015年7月
電話番号:TEL 058-216-0520 FAX 058-215-1932
法人HP:https://sus-sup.com/



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