東京都写真美術館「出光真子 おんなのさくひん――ある映像作家の自伝」

2026年4月21日 火曜日 3:16 PM

日本における実験映画およびビデオアートの先駆的な作家、出光真子(1940-)。東京都写真美術館が収蔵する全作品を、展覧会と上映により網羅的に紹介し、出光の創作活動の全貌を振り返る大規模展覧会。

公式サイト:https://topmuseum.jp/exhibition/5417/
東京都写真美術館「出光真子 おんなのさくひん――ある映像作家の自伝」
出光真子 《Still Life》1993-2000 年 ミクストメディア 東京都写真美術館蔵 (C)Mako Idemitsu

出光真子(1940-)は、日本における実験映画およびビデオアートの先駆的な作家です。1960年代にアメリカ滞在を経て制作を始め、女性の生き方や家族、メディアと社会の関係を主題に、フィルムや当時のビデオを用いた作品を発表しました。とりわけ1970年代以降のビデオ作品では、テレビ・メロドラマの語法を取り入れながら、母と子、夫婦関係、女性の社会的役割といったテーマを独自の視点から描き出しています。近年は、ジェンダーや身体をめぐる国際的な議論の高まりのなかで、その実践があらためて注目されています。
東京都写真美術館では、2016年~2017年度に出光真子のフィルム/ビデオ全作品および主要なインスタレーション作品を収蔵しました。本展は収蔵後初公開となる作品を含め、出光の創作活動の全貌を振り返る大規模な回顧展です。当館で収蔵する全作品を、展覧会と上映により網羅的に紹介します。
※本展タイトルにある「おんなのさくひん(What a woman made)」は、映像作家・出光真子の評価を決定付けた、初のビデオ作品(1973年)のタイトルを用いています。
出光真子 Idemitsu Mako
1940年、出光興産創業者・出光佐三の四女に生まれる。お茶の水女子大学附属小・中・高から早稲田大学第一文学部に進む。卒業後ニューヨークへ留学。抽象画家サム・フランシスと結婚。二児の母。妻であり母であることを超える創造表現への想いやみがたく、映像作家の道を歩む。自身の経験からフェミニズムをベースに、家庭における親と子、表現者として女性が生きる際の社会的摩擦などを問いつづける。著書に『ホワット・ア・うーまんめいど─ある映像作家の自伝』(岩波書店、2003年)、『ホワイトエレファント』(風雲舎、2011年)など。
みどころ

1 日本における実験映画・ビデオアートのパイオニア、出光真子の大規模回顧展

出光は1960年代末、当時暮らしていたアメリカ・サンタモニカで映像制作を始め、フィルム/ビデオ/インスタレーションという映像形式を横断しながら、30年以上にわたり約50点の作品を制作しました。当館はインスタレーションを含む43点を所蔵しています。本展では展示と上映を組み合わせ、これらを一挙に公開し、出光の創作活動の全体像を紹介します。フィルム時代の作品から、ビデオアートの黎明期における独自の映像世界まで、体系的にご覧いただけます。

2 家庭や社会をめぐる視点を、現代のまなざしで捉え直す

出光が画家サム・フランシスと結婚し移住した1965年は、アメリカで女性解放運動が活発化した時期でした。二人の子どもを育てながら、娘、妻、母という社会的役割と、アーティストとしての自己との間で葛藤を抱えつつ制作を続けた出光。鋭い観察眼で自身の日常と社会を見つめ、男性主導の社会構造や日本的な家庭観を描いた出光の作品は、作品発表から30年以上を経た現在においても、女性を取り巻く性や社会のあり方を見つめ直す契機を与えてくれるでしょう。

3 フィルムからビデオへ--映像表現の多彩な魅力

出光はフィルムからビデオへと表現の場を広げ、それぞれのメディアの特性を活かした多彩な映像を生み出しました。16mmフィルムの〈At〉シリーズでは、日米を行き来する出光自身の心象風景を繊細に描き出しました。一方ビデオ作品では、画面内に別のモニターを映し込む「マコ・スタイル」など、ビデオならではの手法を展開します。さらに1980年代のビデオ作品では、テレビドラマのように物語性が強まり、演出の魅力にも富んだ作品へと発展していきます。本展は、こうした表現の変化と広がりをたどる構成となっています。

4 インスタレーション作品 5 点を公開

1976年の《祖母・母・娘》以降、出光は全8点のインスタレーション作品を制作しました。本展では
東京都写真美術館所蔵の3点に加え、作家蔵の2点をあわせた計5点のインスタレーションを、展示室内外で紹介します。

5 40 作品をホール上映、ニュープリントによる 16mm フィルムの上映も

1階ホール(定員190名)では、出光の作品40点を9つのプログラムで上映します。《Woman’s House》、《At Yukigaya 2》など一部作品はニュープリントによる16mmフィルム上映を予定しています。

6 出光真子の全活動を網羅する展覧会図録

出光真子氏および1980年代以降の作品制作を支えたカナダ人ビデオアーティスト、マイケル・ゴールドバーグ氏のインタビューを収録します。そのほか、斉藤綾子氏(映画研究者)、笠原美智子氏(写真評論家、長野県立美術館館長)および当館担当学芸員による論考(一部転載)、作品リスト、年譜、展覧会歴、ビブリオグラフィを掲載予定です。
出品作品(抜粋)

出光真子 《Women’s House》1972 年 東京都写真美術館蔵 (C)Mako Idemitsu
《Women’s House》1972 年
美術家ジュディ・シカゴらが1971年に企画した「ウーマンズ・ハウス」展を出光が訪れ、撮影。学生とともに古い家を改装した展示空間での実践を記録し、約1年の編集を経て最初の16ミリ作品として完成させた。





出光真子 《At Yukigaya 2》1974 年 東京都写真美術館蔵 (C)Mako Idemitsu
《At Yukigaya 2》1974 年
男児2人を育てる中、フィルムを買いに出る時間のない出光は、自宅にあった映画のタイトルやクレジット撮影用のハイコントラスト・フィルムを使って撮影した。高感度を活かし、光に反応するガラス片や木漏れ日、新幹線の灯りを捉え、日米の狭間にある自身の心象風景を表現した。





出光真子 《At Santa Monica 3》1975 年 東京都写真美術館蔵 (C)Mako Idemitsu
《At Santa Monica 3》1975 年
本作もハイコントラスト・フィルムを使用し、数年間暮らしたサンタモニカの家と周辺の風景を撮影している。光と影の動きや水面の反射、光の明滅などを捉え、抒情的でありながら実験的な趣を持つ。出光は、フィルムは日常とは別の世界を作り出し、ビデオは日常を映し出すところだと語る。





出光真子 《おんなのさくひん》1973 年 東京都写真美術館蔵 (C)Mako Idemitsu
《おんなのさくひん》1973 年
1973年の夏、帰国した際にビデオ上映会へ出品を打診され、初めてのビデオ作品を制作。白黒オープンリール機材を用いて、トイレに浮かぶ使用済みタンポンを撮影した。初めて作品上映の機会を得た出光は、以後日米を往復し制作を続けた。本作品は、映像作家・出光真子の評価を決定付けた初のビデオ作品(1973年)であり、本展のタイトルに用いられている。




出光真子 《主婦の一日》1977 年 東京都写真美術館蔵 (C)Mako Idemitsu
《主婦の一日》1977 年
出光自身が出演し、主婦の日常を長回しで捉える。巨大な目がモニターに映り込み、絶えず被写体の主婦=出光自身を監視している。社会的につくられた主婦という立場が、世間の目から形成されるだけでなく、彼女本人の内なる目によっても内面化されていく様子を描く。モニターの入れ子構造は「マコ・スタイル」として後の代表的手法となっていった。





出光真子 《清子の場合》1989 年 東京都写真美術館蔵 (C)Mako Idemitsu
《清子の場合》1989 年
画家志望の清子は両親の意向で結婚し、家事と育児に追われて創作の道を閉ざされる。自己表現への欲求を抑えきれず、追い詰められていく女性の内面と悲痛な叫びを描く。パリで画家を志すも苦悩の末に急逝した長姉に捧げられ、海外でも高く評価された。





出光真子 《加恵、女の子でしょ!》1996 年 東京都写真美術館蔵 (C)Mako Idemitsu
《加恵、女の子でしょ!》1996 年
芸術家カップルの葛藤を描いた本作では、家事や夫の制作補助に追われる主人公が、抑圧に抗い、自らの制作を取り戻す姿を描く。作中には出光のインスタレーション作品《Still Life》(1993-2000年)が登場する。物体への映像投影などのこれまでの作品で取り組んだ手法を組み合わせ、集大成とも言える作品となった。





出光真子 《Still Life》1993-2000 年 東京都写真美術館蔵 (C)Mako Idemitsu 撮影:阿久井長則
《Still Life》1993-2000 年
男女を象徴する二つのオブジェに映像を投影。アンスリウムの花の造形は男性性を想起させ、対となる形は女性性を示す。過去の作品でも見られた、花びらを剥ぎピンで留める反復や、降り落ちる紅い花びらが心の葛藤や矛盾、身体性を象徴している。サウンドは現代音楽家・高橋鮎生が担当。




上映
出光真子の40作品を9つのプログラムで上映します。
上映日|6/18 (木)~20(土)、7/9(木)~12(日)、8/27(木)~30(日)、9/17(木)~20(日)
料金(1プログラム)|一般・シニア500円、学生・高校生以下無料
※本展チケットをお持ちの方は、1枚提示した場合、1プログラムを400円でご鑑 賞いただけます(本展チケット1枚につき 1回限り)。
会場|東京都写真美術館1階ホール
定員|190名
上映スケジュールおよびプログラムの詳細は、決定次第公式ウェブサイトで発表します。

その他会期中に、ゲストによるトーク(全3回)やギャラリートークなどの関連イベントを開催します。
開催概要
展覧会名[日] 出光真子 おんなのさくひん――ある映像作家の自伝
展覧会名[英] Idemitsu Mako What a woman made
会期   2026年6月18日(木)~ 9月21日(月・祝)
主催   東京都、東京都写真美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
会場   東京都写真美術館2階展示室
     東京都目黒区三田 1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
     Tel 03-3280-0099 URL https://topmuseum.jp
開館時間 10:00-18:00(木・金は20:00まで)、入館は閉館30分前まで
     ※8月6日(木)~28日(金)の木・金曜日は夜間特別開館のため21:00まで開館
休館日  毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)
観覧料  一般 700(560)円/学生 560(440)円/高校生・65 歳以上 350(280)円
     ※( )は有料入場者20名以上の団体料金
     ※中学生以下及び障害者手帳をお持ちの方とその介護者(2名まで)は無料
     ※第3水曜日は65歳以上無料
     ※8月6日(木)~28日(金)の木・金曜日17:00~21:00は夜間特別開館による割引料金
     (学生・高校生は無料、一 般・65歳以上は団体料金。証明書の提示が必要)
     リピート割
     本展チケット提示で1回のみ、別日に2割引き(団体料金)で本展の鑑賞が可能
    (本展チケット1枚につき1回限り)。

本展はやむを得ない事情により内容を変更する場合があります。

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