AIの中核技術ディープラーニングの知識はもちろん、起業経験もなかった10代の高専生たちが、わずか1年足らずで「社会課題を解決する事業」として特殊詐欺防止策『サギ止め太郎』を構想し、スタートアップ企業「ToI Nexus」を起業。現在では、自治体や警察との社会課題解決実証プロジェクトに採用され、東京都が主催するアジア最大級のグローバルイノベーションカンファレンス「SusHi Tech Tokyo 2026」(4月27日より開催)に次世代を担うスタートアップ企業の代表として登壇するまでに成長しました。「ToI Nexus」がいかに学生起業家の枠を超え、リアルビジネス企業として評価されたのか?その軌跡をたどることで、開催間近となった高専生のAI技術と事業性を企業評価額で競うビジネスコンテスト「第7回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2026(DCON2026)」(主催:日本ディープラーニング協会(JDLA))の本質に迫ります。

DCON2024で最優秀賞を受賞し、株式会社ToI Nexusを起業した都立産技高専生チーム (C)全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(DCON)
■ 深刻化する特殊詐欺被害防止に挑む「ToI Nexus」の『サギ止め太郎』とは
2025年、日本国内の特殊詐欺被害額は過去最悪の1,414億円(※1)に達しました。巧妙化する手口に対し、抜本的な解決策が急務となる中、今注目されているのが、「ToI Nexus」が主に特殊詐欺被害の防止を目的に開発したAIによる詐欺電話検知システム『サギ止め太郎』です。
このシステムは、特に高齢者を狙った「ニセ警察官詐欺」などの被害防止策として、AIを活用しリアルタイムで詐欺の可能性がある通話を検知します。また、兵庫県の「ひょうごTECHイノベーションプロジェクト」に採択され、2025年度は県民生活部および警察本部と連携した実証を実施しました。現在も本取り組みは継続しており、自治体主催の体験イベントでの採用が進むなど、社会実装に向けた展開が広がっています。
(※1)出典:特殊詐欺 2025年発生状況(警視庁)

DCON2024での審査の様子 (C)全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(DCON)

DCON2024での審査の様子 (C)全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(DCON)
■ 彼らが最初に挑戦した全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(DCON)とは?
2023年当時、東京都立産業技術高等専門学校 品川キャンパス(都立産技高専)のAIスマート工学コース2年生であった西谷さん(現:株式会社ToI Nexus代表取締役CEO)らが、最初の挑戦の起点としてエントリーしたのが「DCON2024」でした。DCONとは、高等専門学校の学生が、ものづくりとAI(ディープラーニング)の技術を活用し、社会課題の解決や新たな価値創出につながる作品やサービスを考案、プロトタイプ制作により競い合う事業創出型のビジネスコンテストです。最大の特徴は、事業性を「企業評価額」という投資価値で評価する点にあります。現役のベンチャーキャピタリスト(VC)である本選審査員がその事業性を評価し、最も「企業評価額」が大きいチームが最優秀賞となります。
このビジネスコンテストを通じて教育プログラムの提供、現役起業家・経営者によるビジネスプラン・プレゼンテーション指南から、コンテスト参加後の起業・事業化支援プログラムまで一気通貫したサポートを行うこともDCONならではの特徴です。
JDLAが設けている「DCON Startup応援1億円基金」による資金提供や創業バックオフィス支援、事業メンタリングなどのサポートを受け、これまでに「ToI Nexus」を含む14社のDCON発スタートアップ企業が誕生しています。
■ 投資家が4億円!で評価した「市場参入戦略」と技術の融合
株式会社ToI Nexus代表取締役CEOの西谷さんが、2024年当時に率いて出場した都立産技高専生チームは、「DCON2024」大会の予選・本選を通じてディープラーニング技術を用いた極めて実効性の高いソリューションを提示しました。彼らが現在開発する『サギ止め太郎』の原型となったプロトタイプ作品とビジネスプランは、「DCON2024」の審査員である投資家たちから企業評価額4億円という極めて高い投資評価を獲得し見事に最優秀賞を受賞しチャンピオンに輝きました。
都立産技高専生チームがエントリーした特殊詐欺を防ぐAIソリューションは、エッジAIが通話音声をリアルタイム解析し詐欺の予兆をその場でアラートすることで、高齢者保護という喫緊の社会課題に応える画期的な作品でした。ただし審査員から4億円もの高額評価を得た背景には、単なるディープラーニング技術の実装や精度だけでなく、社会実装における「障壁」を下記の通り一つずつ解消した点と、リアルビジネスとしての実現可能性にありました。
- 「心理的・金銭的ハードル」の解消:
既存電話機の置き換えコストや導入の煩雑さが普及を阻む障壁となる事を想定し、既存の固定電話に外付けするだけで稼働する設計や仕様により、高齢者が導入をためらう要因となる「高額な買い替え」や「複雑な設定」といったハードルを排除しました。
- 「プライバシーと速度」の両立:
通話内容をクラウドに送らずデバイス内で即時解析するエッジAIを採用。情報の流出を防ぎながら、詐欺の兆候を0.1秒で検知する実用性を証明しました。
- 「公共インフラ」への接続性:
単なる防犯グッズに留まらず、自治体や通信キャリアが将来的に独居老人宅の「見守りサービス」として組み込める拡張性を持たせたことで、社会インフラとしての事業価値を更に高めました。

DCON2024で企業評価額4億円を獲得し、最優秀賞を受賞した都立産技高専生チーム (C)全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(DCON)
■ 高専の教室から、世界が注目するNEXTステージへの橋渡し「DCON」に乞ご期待!!
DCON独自のAIによる事業創出型のビジネスコンテストを通じて、参加高専生らが学び身につけるのは、単に技術を“作れる”だけでなく、“社会に届ける視点”を多面的に考える力です。この「現場主義の実装力」の大会コンセプトは、今や世界が注目する次の起業家誕生のステージへと繋がっています。
その結実の一つが、DCON発スタートアップ企業となった「ToI Nexus」が、東京都主催の国際イベント「SusHi Tech Tokyo 2026」(東京国際フォーラム:4月27日より開催)への登壇が決定した事実です。
「SusHi Tech Tokyo 2026」は次世代を担うスタートアップ企業が登壇し、技術やビジネスのアイデアを発信するピッチコンテストやスタートアップ・企業・投資家などが交流し、具体的な連携を検討できるマッチングプログラムを内容とするアジア最大級のイノベーションカンファレンスです。今回「ToI Nexus」は登壇のみならず、カンファレンス会場において、「“まさか自分が”を防ぐ 最新詐欺体験ワークショップ」を披露し、AI詐欺師による最新の手口を擬似体験させるなど、技術提供に留まらない啓発活動の展開も予定しているそうです。
こうして高専の教室から始まったひとつの挑戦が、DCONを通じて国家規模の課題を解決し得るスタートアップ企業へと飛躍を遂げました。「ToI Nexus」は一つのロールモデルに過ぎません。7回目となる本年のDCONには、過去最多となる40高専/91チーム/119作品の応募が集まりました。「DCON2026」には激戦となった予選を勝ち抜いた、「新たな若き才能」最終10チームが一同に集結する予定です。

DCON2024本選に出場した高専生たち (C)全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(DCON)
■ 次なる「若き才能」が羽ばたく瞬間を目撃!5月、DCON2026開催
「ToI Nexus」の成功は、DCONというエコシステムから生まれる可能性の氷山の一角に過ぎません。2026年5月8日・9日、再び渋谷の地に、彼らに続く「社会を変える10代」たちが全国から集結します。投資家が「企業評価額」でジャッジを下す本コンテストは、日本をアップデートする次なる若き才能を、どこよりも早く発見できる場です。彼らが「本物の起業家」へと飛躍する歴史的な生の瞬間を、ぜひ会場でご体感ください。
【DCON実行委員長 松尾豊 コメント】

DCON 実行委員長・日本ディープラーニング協会 理事長・東京大学大学院工学系研究科 教授 松尾豊 (C)全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(DCON)
「ディープラーニングを社会で活かすには、『ものづくり』と結びついた実装力が欠かせません。高専生は、その実装力を強みに、技術を社会で使われる形にできる人材です。
また近年、AIが社会のインフラへと変化していく中で、日本としても自らAIを開発できる技術力を持つ重要性が高まっています。DCONは、そのような力を高専生が実践を通じて磨く場として、年々価値が高まっています。企業評価額という指標で、技術と事業性を競い合う点も大きな見どころです。ぜひ高専生の挑戦に注目していただければと思います。」
■「DCON2026」本選 開催概要
- 日時:2026年5月8日(金)・9日(土)
- 場所:ヒカリエホール(東京都渋谷区渋谷 2 丁目 21-1 渋谷ヒカリエ 9F)
- 内容:過去最多119作品から選抜された下記10チームが出場し、医療・防災・農業・インフラ等の社会課題に対し「AI×ものづくり」による解決策を提案
- 出場校:10チーム(以下、並び順はプレゼンテーション順となります)
- 仙台高等専門学校 広瀬キャンパス(チーム名:それいけ!運搬マン)物流人材不足を解消する全自動運搬ロボットとAIを組み合わせた配送システム
- 神山まるごと高等専門学校(チーム名:codell)介護現場の「今・誰に・何をすべきか」という判断を可視化するAR×AI支援
- 沖縄工業高等専門学校(チーム名:Omoide.lab)日常会話の声の揺らぎで認知症を早期検知するAI
- 舞鶴工業高等専門学校(チーム名:mAIzuru)
観葉植物と対話しながら世話を支援する対話型AIプロダクト
- 沼津工業高等専門学校(チーム名:SOUTA)
飲食店の空席状況を可視化し、機会損失を防ぐ飲食店支援AIサービス
- 久留米工業高等専門学校(チーム名:Atelier-I)
視覚障害のある高齢者の歩行を支えるAIシルバーカー
- 沖縄工業高等専門学校(チーム名:Seesar Labs)
火災検出から消火までを包括的に実現する無人消火システム
- 沖縄工業高等専門学校(チーム名:Rewave)
通信途絶下で被災地を繋ぐ次世代防災通信デバイス
- 豊田工業高等専門学校(チーム名:Kanro AI)
下水道点検を自動化するスマート点検ロボット
- 釧路工業高等専門学校(チーム名:超音サンマ)
イヤホン装着ストレスと音漏れ悩みを解消する新音響技術
DCONは、投資家が企業評価額の観点で審査を行う、日本でも稀有な実践型コンテストです。将来の社会実装を担う技術と人材をいち早く発見する場として注目されています。
詳細はDCON公式サイト(https://dcon.ai/)をご覧ください。
【日本ディープラーニング協会(JDLA)について】
一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)は、AIの中核技術であるディープラーニングを日本の産業競争力の向上につなげることを目的とし、2017年に設立されました。産業活用の促進、人材育成、政策提言、国際連携、社会との対話などを通じ、AIの健全な発展と社会実装を推進しています。また、企業・大学・研究機関・行政の連携を深め、AIを日本の産業全体に浸透させることで、豊かな未来を支える新たな社会基盤の構築を目指しています。
https://www.jdla.org/
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