『竹村 京 うごくせかい』日常から災害まで、縫う行為を通して、移り変わる世界と向き合う現代美術家・竹村京の大規模個展。

7月25日(土)~10月12日(月・祝)水戸芸術館現代美術ギャラリーにて。ワークショップや鑑賞プログラムも充実。

『竹村 京 うごくせかい』日常から災害まで、縫う行為を通して、移り変わる世界と向き合う現代美術家・竹村京の大規模個展。


竹村 京は、時間の流れや人・物の移動、天変地異、偶然の出来事など、さまざまな要因によって揺らぐ世界のなかで、「縫う」という行為によって対象に新たな光を与える作品を制作してきました。友人の幸せな生活を等身大で写し取り、その一部を縫い留めることで地震にも負けない保管のかたちを模索した初期作品《A.N.のリビングルーム、地震の予感》(2005年)をはじめ、写真やドローイングに布を重ねて刺繍する平面作品や、壊れた日用品を布で包み失われた部分に沿って独自の「修復」を行う立体作品、緻密な運針のなかに時間の流れや世界との交感を表した「Time counter」など、その関心は一貫して、個人の記憶や出来事を作品のなかに「仮留め」し、一つひとつの存在を現在から未来へとつなぐことへと向けられています。
竹村にとって過去最大規模の個展となる本展では、2000年代の代表作を起点に、「修復」を施した作品群や、「天災」と「修復」を主題とした新作インスタレーション、水戸の街なかで参加者が「修復」の意味を考え、実践するワークショップなど、その多彩な創作から、記憶と喪失、時間や行為における不可逆性といったテーマへと迫ります。
今日の世界は、価値や真偽が容易に反転し、現実との向き合い方に戸惑うほど不安定な状況にあります。世界を支えるのは変転か普遍か、過去・現在・未来の変遷のなかで、わたしたちは何を引き受け、何を受け渡していくのか。本展は、揺らぐ世界への応答を続ける竹村の作品を通して、出来事やその記憶との向き合い方について、ともに考える機会となるでしょう。


竹村 京《入ってもよろしいですか シーン1, 2, 3, 4, 5》2023年(参考図版)

展覧会の3つのポイント

1.日常から災害まで、縫う行為を通して移り変わる世界と向き合う現代美術家・竹村 京による、過去最大規模の個展
竹村 京(1975年東京都生まれ)は、壊れてしまった物や失われていく場所、個人的な記憶など、忘却や淘汰のなかに埋もれてしまいそうな存在に目を向け、「縫う」という行為によって新たな光を与える作品を制作してきました。日本最古の刺繍作品とされる「天寿国曼荼羅繍帳」との出会いをきっかけに、絹糸で縫う行為とドローイング、写真、ファウンド・オブジェなどを組み合わせた独自の表現を展開。グローバル化と情報化が加速する現代社会において、あえて身近な人物や出来事に根差した制作を追求し、「第15回シドニー・ビエンナーレ」(2006年)をはじめ国際的な舞台で高い評価を得てきました。
2015年に帰国してからは、ポーラ美術館(2018年)、群馬県立近代美術館(2019年)、「ヨコハマトリエンナーレ2020」など国内の主要な美術館や国際展で発表を重ねるほか、京都国立近代美術館での「『CONNECT⇄_』身体感覚で楽しむプログラム 竹村京『Floating on the River』」(2021~2022年)では、身体的・感覚的な関わりを通して鑑賞者と交流するプログラムにも取り組んできました。
本展は、竹村にとって過去最大規模となる個展です。2000年代初頭から現在までの代表作・新作を通して、平面、立体、インスタレーション、パフォーマンスに至る、その多彩な実践を紹介します。また、本展のために制作される2つの新作では、「記憶」「修復」「災害」「家」といった主題が有機的に交差し合う、その表現の新たな展開を見ることが出来るでしょう。日常のなかの些細な変化から天変地異まで、絶えず揺れ動く世界に対し、自らの手で縫うという極めて身体的な行為によって向き合い続ける竹村の創作にぜひご注目ください。


竹村 京《A.N.のリビングルーム、地震の予感》2005年 豊田市美術館蔵


2.揺れ動く世界と向き合う2つの新作
本展では、「地震」を主題とした2つの新作を発表します。
新作《May i enter?, all things move》は、展示室内に宙吊りのガラス窓を出現させるパフォーマンスとインスタレーションによる作品です。古代の記憶術「記憶の宮殿」の逸話を起点に、災害と隣り合わせにある日本の風土や、その中で繰り返される破壊と再生、開発と反復の営みへと意識を向ける本作は、これまでの作品で扱われてきたテーマを引継ぎながらも、竹村の表現の新たな展開を見せる作品となるでしょう。
もう一つの新作では、能登半島地震を契機に廃棄された黒瓦に注目します。厳しい自然環境下で人々の暮らしを守ってきた能登の瓦は、地震による落下だけでなく、被災後の家屋の解体や街の再建の過程でも大量に失われたと言います。竹村は、災害に伴うこれらの葛藤に目を向けながら、蛍光シルクを用いて瓦に「修復」を施すことで、その存在に光を当てるとともに、行為における故意と不可抗力の境界、そして時間や出来事の不可逆性を示唆する美しい作品へと昇華します。なお、本展で披露される能登の瓦を用いた新作は、能登半島地震によって生じた九谷焼や珠洲焼のかけらを素材として用い、工芸家やアーティストの技術によって新たな表現の可能性を探求するRediscover project by CACLの協力で実現に至りました。(Rediscover project by CACL https://rediscoverproject.jp/
(協力:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、群馬県立群馬県産業技術センター、株式会社CACL)

撮影:木暮伸也(参考図版)※赤色蛍光シルクに含まれる蛍光タンパク質は(国研)理化学研究所及び(株)医学生物学研究所が開発したものです。

3.「修復」を通した問いかけ
竹村は、壊れた物や失われた部屋の一部を作品のなかに縫い留める自身の実践を「修復」と呼びます。竹村の「修復」は、割れたグラス、ひびの入った皿、使い古されたブラシ、壊れたおもちゃなど、日常のなかで役割を終えた品々を透け感のある布で包み、その上から刺繍を施すことで行われます。一般的な修理のように元の状態に戻すのではなく、制作を経て「壊れることを体験した貴重な存在」として提示される品々は、それぞれが辿ってきた時間や経緯を想像させ、私たちと私たちを取り巻く物質世界との関係を静かに問い直します。
本展では、竹村が「修復」した作品を展示するとともに、竹村による「修復」の作品を手掛かりに、市民や街が「修復」について考えながら参加する交流プログラムを水戸商工会議所との共催で実施します。同プログラムでは、参加者の身の回りで起きた出来事にまつわる品物や写真を募り、参加者自身が「修復」を行って、そのエピソードとともに展示します。さらに、地域で実践されているさまざまな「修復」の現場を訪ねながら、「修復」することの意味や方法、移り変わるものとの向き合い方について、多様な立場から考え、ともに考えを深める機会を創出します。

竹村京《renovated cake-plate, broken during a concert by Chicks on Speed》2004年個人蔵



水戸芸術館「高校生ウィーク2026」でのプレ・ワークショップの様子

水戸芸術館「高校生ウィーク2026」でのプレ・ワークショップ 参加者が修復した水戸芸術館広場のスプリンクラー

作家プロフィール

竹村 京(たけむら けい)


1975年東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻(油画)修了後、ベルリン芸術大学で学ぶ。2015年、群馬県高崎市に移り、現在も同地を拠点に国内外で作品を発表している。
国内での代表的な展覧会に、初期から2010年代までの作品を集め、家族、記憶、時間といったテーマを掘り下げた「長島有里枝×竹村京 まえといま」(群馬県立近代美術館、群馬、2019年)や、トランプをモチーフに偶然や越境の美しさを問いかけた個展「竹村京-どの瞬間が一番ワクワクする?」(ポーラ美術館、神奈川、2018年)がある。
近年の主な展覧会に、「セカイノコトワリ―私たちの時代の美術」(京都国立近代美術館、2025年)、「ついてはなれて」(タカ・イシイギャラリー 前橋、群馬、2025年)、「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?―国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」(国立西洋美術館、東京、2024年)、「ホーム・スイート・ホーム」(国立国際美術館、大阪、2023年/丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、香川、2024年)、「広島市現代美術館リニューアルオープン記念特別展 Before/After」(広島市現代美術館、2023年)、ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」(横浜美術館、2020年)がある。




展覧会概要

展覧会名:竹村 京 うごくせかい
会期:2026年7月25日(土)~10月12日(月・祝)
開場時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリーほか
休館日:月曜日(ただし 9月21日、10月12日は開館)
入場料:一般 900円、団体(20名以上)700円
高校生以下/ 70歳以上、障害者手帳などをお持ちの方と付き添いの方 1 名は無料      
※学生証、年齢のわかる身分証明書が必要です      
●1年間有効フリーパス「年間パス」2,000 円      
●学生とシニアのための特別割引デー「First Friday」
→ 学生証をお持ちの方と 65歳~69歳の方は毎月第一金曜日(8月7日、9月4日、10月2日)100 円
主催:公益財団法人水戸市芸術振興財団
特別協賛:株式会社メルコグループ
助成:芸術文化振興基金
協力:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、群馬県立群馬県産業技術センター、
株式会社CACL、タカ・イシイギャラリー、サントリーホールディングス株式会社
企画:後藤桜子(水戸芸術館現代美術センター学芸員)

関連プログラム

記載がない限り、申込不要・参加費無料(要展覧会入場券)でどなたでもご参加いただけます。
■オープニング・トーク
日時:7月25日(土)14:00~15:30(開場13:30)
出演:竹村 京(出品作家)、ロバート キャンベル(日本文学研究者、早稲田大学特命教授)
会場:現代美ギャラリー ワークショップ室
定員:70名(先着順)

■パフォーマンス
新作《May i enter?, all things move》のパフォーマンスを行います。
日時: 7月25日(土)、8月8日(土)、9月22日(火・祝)ほか 各日12:00~

■竹村 京×小林愛花 ワークショップ【要申込】
「心震えるチョコで情熱を灯す」をテーマに、分子レベルにまでこだわって、五感に響くチョコレートを探求するショコラティエ・小林愛花さんによるワークショップ。展覧会のテーマ「うごくせかい」を、チョコレートを通して味わいます。
講師:小林愛花(ショコラティエ・「AikaKobayashi」代表)
■展覧会連動ワークショップ【要申込】
少し前までは茨城県でもあちこちでおこなわれていた養蚕。しかし、身近とは言いにくい存在となってしまった蚕を育て、糸を取ることを通じて、展覧会をより楽しむ準備を行うワークショップ。
(原則2回連続、詳細を確認の上、要申込)

1.「まちの桑で蚕を育ててみよう」 ※終了しました
日時:6月6日(土)、7日(日)各日10:00~12:00
場所:現代美ギャラリー ワークショップ室及び水戸芸術館近隣
定員:各回15名程度(先着順)
参加費:無料

2.「繭から糸をとってみよう」
日時:7月4日(土)、5日(日)各日10:00~12:00
場所:現代美術ギャラリー ワークショップ室
定員:各回20名程度(先着順、6月WS参加者を優先するが空きがある場合はこの回のみの参加も可)
参加費:無料
■担当学芸員によるギャラリーツアー
少人数にむけて、本展担当学芸員がツアー形式で展覧会を解説します。
日時:8月1日(土)、9月22日(火・祝)14:30~(約60分)

■ウィークエンド・ギャラリートーク
市民ボランティアCACギャラリートーカーと対話を通してともに展覧会を鑑賞します。
日時:8月15日(土)より毎週土曜日 14:30~(約40分)※館内催事の都合により中止となる場合があります。
■視覚に障害がある人との鑑賞ツアー「session!」【要申込】


全盲の美術鑑賞者・白鳥建二さんらをナビゲーターに、見える人と見えない人が会話しながら展覧会を鑑賞します。
日時:8月22日(土) 10:00~12:00/14:30~16:30
     23日(日) 14:30~16:30
定員:各回15名(先着順)
参加費:1,500円(入場料込み)、入場料減免対象の方は600円
申込:7月28日(火)10:00~



■赤ちゃんと一緒に美術館散歩【要申込】


就学前のお子さんと保護者の方に向けた鑑賞ツアー。
日時:9月5日(土)、8日(火) 10:30~12:00
定員:各回5組(先着順)
参加費:未就学児無料、保護者1,500円(入場料込み/2人目からは入場料のみ)、入場料減免対象の方は1,000円 
申込:7月28日(火)10:00~



同時期開催

「壊れ物の〈修復〉を通して、水戸の街を知る・探る・見つける」街なか展示
(ワークショップ成果展)
竹村京の作品を手掛かりに、参加者が壊れてしまった物や失われていく場所との向き合い方を考えて〈修復〉した品々を街なかで展示します。会期中、水戸商工会議所と水戸芸術館による、街とアートの連携を辿るツアーも実施します。
会期:7月25日(土)~10月12日(月・祝) ※公開日時は展示場所や店舗の営業日時に準じます。
会場:水戸市中心市街地各所
共催:公益財団法人水戸市芸術振興財団、水戸商工会議所

こども芸術館 サマー・フェス2026【要申込・一部当日参加可】


2011年夏より続いてきた「こども・こらぼ・らぼ」が、再び水戸芸術館3部門を挙げての催しになりました。美術部門ではアーティストコレクティブ「そろそろart in progress」を昨年に続けて今年も浜松からお呼びし、さまざまな技法・素材と出会い、自由に表現し、参加者同士が影響し合うワークショップを開催します。タイトルは「ヤー!ヤー!ヤー!MITO」。
日程:8月8日(土)・9日(日)
定員:各日100名程度(先着順)
参加費:1日パス制(展覧会入場料込み)一般1,700円、高校生以下1,000円、3歳以下無料




HIBINO CUP【要申込】


日比野克彦主宰のアートとスポーツのワークショップ。チームごとにダンボールなどでゴールとボールをつくり、Tシャツに絵柄を描いてユニフォームを仕立て、ミニサッカーで競います。
日時:9月23日(水・祝)10:00~16:00 ※荒天中止
会場:広場
対象:小学生以上
定員:50~70名[10チーム](先着順)
参加費:500円/1人
申込:8月18日(火)10:00~
主催:HIBINO CUP実行委員会、公益財団法人水戸市芸術振興財団
協力:水戸21の会、サントリーホールディングス株式会社








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