「食べる」は、世界を知る授業になる。オイスカ浜松国際高校・政本ゆかり教諭がカンボジアで食文化交流を実践

海苔、鰹節、おにぎり、そばで日本を伝え、カエル料理を含む現地の食卓から学ぶ。家庭科の学びを世界へ届け、カンボジアから得た経験を日本の教室へ還す「CoRe Loop」

特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト(所在地:千葉県松戸市、代表:中村雄一)は、2026年8月21日から28日まで、カンボジア王国シェムリアップ州で「カンボジアプロジェクト2026」を実施しました。
今回の活動には、なかよし学園のパートナー校であるオイスカ浜松国際高等学校の家庭科教諭・政本ゆかり氏が、なかよし学園メンバーとして参加。現地の小学校や地域において、海苔、鰹節、せんべい、ふりかけ、おにぎり、日本茶、そばなどを活用し、日本の食文化を紹介する授業を行いました。
一方で政本氏自身も、ホームステイ先やAKIRA地雷博物館のスタッフ、現地協力者との食事を通じ、カンボジアの家庭料理や米粉麺、カエルを使った料理など、日本では日常的に触れる機会の少ない食文化を体験しました。
日本の食文化を一方的に「教える」のではなく、カンボジアの暮らしと食から学び、そこで得た驚きや問いを日本の学校へ持ち帰る。今回の実践は、教師自身が日本と世界の学びを往復させる、なかよし学園の循環型教育モデル「CoRe Loop」となりました。

カンボジアの子どもたちに日本の食材を紹介する政本ゆかり教諭

家庭科の授業が、国境を越えて「生きた教材」に
食べることは、誰にとっても身近な営みです。しかし、その一皿の背景には、地域の気候、農業、漁業、保存技術、宗教、家族の習慣、歴史、経済など、社会を理解するための多くの要素が含まれています。
家庭科教諭である政本氏は、今回のカンボジアでの授業において、食べ物を単に試食してもらうのではなく、日本の自然や暮らしを知るための「教材」として活用しました。
海に囲まれた日本では、海苔や鰹節などの海産物を保存・加工し、日々の食事に取り入れてきました。米を中心とする食文化は日本とカンボジアに共通していますが、米の種類や炊き方、麺への加工、味付け、合わせる食材は異なります。
共通点があるからこそ、違いを比べることができる。違いがあるからこそ、「なぜ、この食べ方が生まれたのだろう」という問いが生まれる。政本氏は、味、香り、手触り、見た目など、五感を使った食文化交流を通じ、言葉だけに頼らず日本を伝えました。

日本の食材と食べ方を紹介し、実食経験を作る授業を行う政本氏

約100名の児童が海苔や鰹節を体験
8月25日、なかよし学園はシェムリアップ州のSPEAN CHRIEV AMELIO PRIMARY SCHOOLを訪問し、児童約50名のクラスを2クラス、合計約100名を対象とした特別授業を実施しました。
なかよし学園代表の中村雄一が世界地図を使って日本とカンボジアの位置を紹介した後、政本氏がせんべい、海苔、鰹節、ふりかけなどを用いた食文化授業を担当しました。
子どもたちは、日本の食材を実際に見て、香りを確かめ、味わいながら、それぞれが何から作られているのか、どのように食べられているのかを学びました。
日本食を「珍しい外国の食べ物」として紹介するだけではありません。海苔や鰹節が海の資源から生まれること、食材を乾燥させることで保存できること、米と組み合わせることで一つの食事になることなど、日本人の暮らしの中で培われてきた知恵を伝えました。
普段の家庭科授業で扱う食材や調理、栄養、保存、地域文化というテーマが、そのままカンボジアの子どもたちと日本をつなぐ国際理解教育になりました。

海苔や鰹節など、日本の食材を五感で体験する子どもたち

おにぎりと日本茶から始まった、双方向の食文化交流
8月26日には、My Happy Village Cambodia Schoolの午前部・午後部で、食文化、防災、環境、職業、音楽、調理を横断した授業を実施しました。
食文化授業では、おにぎり、鰹節、海苔、日本茶を紹介。子どもたちは味や香り、食べ方を体験し、日本の日常の食卓に触れました。
授業終了後には、同校の校長先生から、カンボジアの米粉麺を使ったヌードルが提供されました。

カンボジアの米粉麺を使ったヌードルを食すなかよし学園メンバーたち

日本側が料理を教え、カンボジア側が教わって終わるのではありません。日本の米文化を伝えた後、今度はカンボジアの米文化を教えてもらう。教える側と教わる側が入れ替わり、同じ「米」という食材を通して、両国の暮らしの共通点と違いを学び合う時間となりました。

実際に米粉麺をつくらせてもらう中村里英事務局長

同校では、中村里英事務局長によるそば打ちワークショップも実施しました。生徒10名と校長先生が、粉に水を加え、こね、延ばし、切り、調理して食べるまでの工程を体験しました。
完成した料理を受け取るだけではなく、自分たちの手で作ることで、食材が料理へ変わる過程、仲間と協力すること、最後までやり遂げる達成感を共有しました。

初めてのそば打ちに挑戦し、生地を延ばす生徒たち

地雷を除去する人々を「食」で支える
今回の食を通じた活動は、子どもたちへの文化紹介だけではありません。
8月23日には、AKIRA地雷除去チームのスタッフを対象に、天ぷら、ピザ、そばの調理ワークショップを行いました。

AKIRA地雷博物館で日本料理をつくるなかよし学園チーム

地雷除去は、わずかな判断ミスが命に直結する仕事です。強い緊張の中で活動を続けるスタッフにとって、安全な場所で仲間と一緒に料理を作り、同じ食卓を囲み、笑い合う時間は、気持ちを切り替え、チームのつながりを確認する時間にもなります。
本活動は医療的な心理療法ではありませんが、文化交流と共同調理によって、安心感、協働、気分転換、達成感を生み出す心理社会的支援の一環として実施しました。
地雷をなくす活動を支えるためには、除去に必要な道具や資金を提供するだけでなく、その仕事を担う「人」を支える必要があります。料理を作り、食事をともにするという日常的な営みが、過酷な活動に従事する人々の尊厳と心を支える後方支援になりました。

数々のプロジェクトを共に行なってきた、地雷除去スタッフとなかよし学園メンバー

カエル料理との出会いを「珍しい体験」で終わらせない
政本氏は、日本食を伝えるだけでなく、現地協力者宅での滞在やAKIRA地雷博物館スタッフとの交流を通じ、カンボジアのさまざまな料理を体験しました。

地元の市場で食材をチェックする政本氏

オイスカ高校で栽培した胡麻を使った料理を作る政本氏

AKIRAの農園を手伝う政本氏

博物館スタッフと連携し地雷の説明を行う政本氏

カンボジアでは、日本では日常的に食べる機会の少ないカエルを使った料理も食しました。
こうした食材を「変わった食べ物」「珍しい食文化」として消費するだけでは、相手の暮らしを理解したことにはなりません。なぜその地域で食べられているのか、どのように調理され、誰と食卓を囲むのか。その背景を知ることが、食文化を学ぶということです。

日本とは違った様々な食材を食べるカンボジア

ある地域での「当たり前」は、別の地域では驚きになります。しかし、自分の当たり前を基準に相手の文化を評価するのではなく、まず食べ、話を聞き、生活とのつながりを考える。その姿勢は、多文化共生を学ぶうえで重要な出発点になります。
カンボジアで政本氏が味わったのは、料理だけではありません。食事を用意して迎えてくれた人々の思い、同じ皿を囲むことで生まれた会話、地域の食材を生かす知恵、家族や仲間と食べる時間の意味を含めた「食文化そのもの」でした。

現地の家庭や博物館スタッフとの食事を通じ、カンボジアの食文化を学ぶ政本教諭

教師自身が世界で学ぶ「実装型の教員研修」
オイスカ浜松国際高校はユネスコスクールとして、国際理解、環境学習、地域協働、持続可能な社会づくりを重視した教育を展開しています。
同校となかよし学園は、2025年度から「世界とつながる学びプロジェクト」を本格的に進めてきました。生徒が摘んだオイスカ茶はケニアやシリアで日本文化を学ぶ教材となり、オイスカ米はカンボジアでのおにぎり支援に活用されました。生徒が制作したSDGsカルタ、防災カルタ、海洋プラスチックを再生したフライングディスクなども、世界各地の教育現場へ届けられています。
2026年8月のルワンダプロジェクトには、同校の鈴木哲子教諭がなかよし学園メンバーとして参加。生徒たちが制作した千羽鶴やポスター、メッセージ入りフライングディスクを現地へ届け、自ら授業者として教壇に立ちました。

なかよし学園メンバーとしてルワンダで授業を行うオイスカ学園鈴木教諭

そして今回、政本氏がカンボジアの教育現場へ参加したことで、同校との連携は「生徒が教材をつくる」段階から、「教員が世界の現場で実践し、現地から学びを持ち帰る」段階へと発展しました。
これは海外研修の引率でも、教育施設の視察でもありません。教員が自ら授業を行い、異なる文化や教育環境の中で子どもたちの反応を受け止め、教材や伝え方を検証する「実装型の教員研修」です。
家庭科という日常に最も近い教科が、世界の暮らし、文化、環境、平和とつながりました。

ウクライナにも届いたオイスカ高校のフライングディスク

政本教諭がつなぐ「食のCoRe Loop」
なかよし学園は、日本で生まれた学びを海外へ届け、現地の経験や知恵を日本へ還す往還型教育モデル「CoRe Loop」を展開しています。
今回の食文化交流では、次の循環が生まれました。

Create
日本の家庭科教育で培われた食材、調理、栄養、保存、衛生、地域文化に関する知識を、海外の子どもたちに伝えられる授業へ組み直す。

Reach
政本氏がカンボジアの学校を訪れ、海苔、鰹節、ふりかけ、おにぎり、日本茶などを使って、日本の食文化を授業として届ける。

Co-Reflect
子どもたちや教員、地域住民とともに食べ、感想を交わす。さらに、米粉麺やカエル料理など、カンボジアの食文化を政本氏自身が体験し、互いの暮らしを学び合う。

Return and Redesign
写真、映像、現地で聞いた言葉、食事をともにした経験をオイスカ浜松国際高校へ持ち帰る。家庭科や探究学習の中で生徒と共有し、次の教材や国際協働を再設計する。

日本食を届けた時点で、活動は完成しません。
カンボジアで学んだことを生徒へ伝え、「自分たちの食卓は世界とどうつながっているのか」「異なる食文化を理解するとはどういうことか」「家庭科で学ぶ力を世界のためにどう生かせるか」を考えるところまでが、今回のプロジェクトです。

オイスカ浜松国際高等学校・政本ゆかり教諭 コメント
「実際にカンボジアを訪れ、現地で見て、聞いて、体験したことで、ポル・ポト政権時代の歴史や、現在も続く地雷問題について、日本にいたときより深く知ることができました。同時に、『もっと知りたい』『自分にもできることを考えたい』という気持ちが強くなりました。
地雷は少しずつ撤去されていますが、今も多くが残されています。その危険と向き合い、地雷を一つひとつ処理している人たちがいることを、私たちは決して忘れてはいけないと思います。貧困や格差など、カンボジアには今も多くの課題があります。しかし、その課題を乗り越えようと行動する人々にも出会い、カンボジアの未来は明るい、そして私もその未来を明るくする一人になりたいと感じました。
戦争や貧困は、一人の努力だけで解決できる問題ではありません。それでも、厳しい環境の中でたくましく生きる子どもたちの姿が、とても強く心に残っています。

今回、子どもたちに日本の食文化を伝える授業を行うと、初めて見るもの、初めて触れるものに目を輝かせ、本当に素敵な笑顔を見せてくれました。私が何かを届けに行ったつもりでしたが、実際には、私の方が子どもたちからたくさんの元気と勇気をもらいました。
私の授業が、子どもたちにとって新しい世界を知り、将来の夢を持つ小さなきっかけになったとしたら、こんなにうれしいことはありません。2年後、5年後、10年後、今回出会った子どもたちの中から、カンボジアをよりよく変えていく人が育っていくことを、今からとても楽しみにしています。
そして、カンボジアで私が学び、感じたことを日本の生徒たちにも伝えたいと思います。互いの文化を知り、学び合うことから、私たちにもつくれる未来がある。そのことを、これからの授業で生徒たちと一緒に考えていきたいです」

家庭科教師としても戦争の歴史を語る語り部としても今後ますます活躍が期待される政本教諭

なかよし学園プロジェクト代表・中村雄一 コメント
「食は、言葉や年齢を越えて人と人をつなぐ、とても身近な教育の入口です。しかし、日本の食べ物を海外へ持っていき、食べてもらうだけでは、本当の国際交流にはなりません。
大切なのは、私たちも相手の食卓に座り、その土地の味を知り、なぜその料理が食べられているのかを学ぶことです。今回、政本先生は家庭科教諭として日本の食文化を伝えると同時に、カンボジアの人々から多くのことを学びました。
そして、その経験を日本の学校へ持ち帰ります。教える人と教わる人、支援する人と支援される人を固定せず、互いの経験を次の学びに変えていく。教師自身がこの循環の担い手になったことに、今回の活動の大きな意味があります。
学校で日々教えられている家庭科、体育、芸術、音楽など、すべての教科は世界の課題とつながる可能性を持っています。なかよし学園はこれからも、先生と生徒が自分の専門や得意なことを使って世界と学び合える環境をつくっていきます」

AKIRA地雷博物館メンバーと

今後の展開
政本氏は、今回のカンボジアでの授業や食文化体験をオイスカ浜松国際高校へ持ち帰り、生徒へのフィードバックを行います。
なかよし学園と同校は今後、次の取り組みを検討していきます。
・カンボジアの食文化や暮らしを題材とした家庭科・探究授業
・日本とカンボジアの米文化や保存食を比較する教材づくり
・現地での写真、映像、子どもたちの反応を活用した報告授業
・生徒が日本の食文化を海外へ伝える教材の制作
・カンボジアの子どもたちから日本へ食文化や暮らしを伝える交流
・食品ロス、地産地消、栄養、衛生、気候変動などを扱う国際的な食育
・教員が海外の教育現場で専門教科を実践する研修モデルの展開


食べることから、世界を知る。
食卓を囲むことから、違いを越えて対話する。
世界で得た学びを、次の日本の授業へ還す。

オイスカ浜松国際高校となかよし学園は、家庭科の学びを国境の内側だけにとどめず、世界の人々とともに未来をつくる教育へ発展させていきます。

実施概要
活動名:カンボジアプロジェクト2026 食文化交流プログラム
実施期間:2026年8月21日から8月28日
実施地域:カンボジア王国シェムリアップ州

主な活動場所:
・AKIRA地雷博物館および地雷除去チーム活動拠点
・SPEAN CHRIEV AMELIO PRIMARY SCHOOL
・My Happy Village Cambodia School
・現地協力者宅および地域コミュニティ

主な内容:
・海苔、鰹節、せんべい、ふりかけ等を使った日本食文化授業
・おにぎり、日本茶の試食・試飲
・そば打ちおよび共同調理ワークショップ
・地雷除去スタッフへの食を通じた交流・後方支援
・カンボジアの家庭料理、米粉麺、カエル料理等の文化体験
・日本の学校へ還元する家庭科・探究学習の教材収集

参加教員:政本ゆかり氏(オイスカ浜松国際高等学校・家庭科教諭)
実施団体:特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト

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団体概要
団体名:特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト
代表者:中村雄一
所在地:千葉県松戸市
事業内容:「世界とつながる学び(CoRe Loop)」を軸とした探究・平和・包摂教育プログラムの企画運営、国内外における教育支援、平和教育、災害支援、食料支援等
公式サイト:https://nakayoshigakuen.org
CoRe Loop:https://nakayoshigakuen.org/coreloop

本件に関するお問い合わせ先
特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト
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写真素材・取材対応が可能です。
掲載時の写真クレジット:(C)なかよし学園プロジェクト

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