【大谷大学博物館 2026年度特別展】【国宝「金印」の本物の印影/国難に立ち向かった大蔵経】 2026年度特別展『摺る・捺す・写す―文字の諸相―』
大谷大学(所在:京都市北区 学長:木越 康)は、2026年10月10日(土)~11月28日(土)の期間、2026年度特別展『摺(す)る・捺(お)す・写す―文字の諸相―』を開催します。
本展は、東アジアの漢字文化圏において文字がどのように残されてきたのかを、「摺る(印刷)」「捺す(印章)」「写す(拓本・写経)」という3つの技法から読み解く展覧会です。教科書でおなじみの国宝の金印「漢委奴国王」を実際に捺した“本物の印影”や、モンゴル襲来という国難のなかで開板された「高麗版大蔵経」など、文字が刻まれた背景にある歴史のドラマごと味わえる構成で、重要文化財を含む全44件を展示します。
開催に先立ち、2026年10月9日(金)、大谷大学(京都/本部キャンパス)にて、メディア向け説明会および内覧会を実施いたしました。

2026年度特別展『摺る・捺す・写す―文字の諸相―』イベントページ
https://www.otani.ac.jp/events/tokubetuten26.html
説明会では、川端 泰幸 教授(文学部歴史学科 ・大谷大学博物館学芸員)が登壇し、本展への想いと見どころを解説。続く内覧会では「漢委奴国王印原鈐本」や「高麗版大蔵経」に注目が集まり、活発な質疑が交わされました。
2026年度特別展『摺る・捺す・写す―文字の諸相―』概要
■会 期 :2026年10月10日(土)~11月28日(土)(開館日数40日間)■会 場 :大谷大学博物館(〒603-8143 京都市北区小山上総町 大谷大学 響流館1F)
■開館時間:午前10時~午後5時(入館は閉館の30分前まで)
■休館日 :日・月・祝
■観覧料 :一般・大学生500円
■主催 :大谷大学博物館
■後援 :京都府、京都府教育委員会、京都市、京都市教育委員会、京都市内博物館施設連絡協議会、エフエム京都、真宗大谷派(東本願寺)
川端 泰幸教授による特別展の説明
メディア説明会・内覧会の冒頭にて、川端 泰幸教授は今回の展示について、「中国・朝鮮半島・日本をふくむ東アジアの漢字文化圏で、文字がどのように残されてきたのかを『摺る』『捺す』『写す』という三つの技法から捉え直す展覧会である」と説明しました。また、大谷大学博物館には、第13代学長で東洋学者でもあった大谷瑩誠氏旧蔵の禿庵文庫、京都国立博物館長などを歴任した神田喜一郎博士旧蔵の神田コレクションなど、文字にまつわる貴重な文物が数多く所蔵されていることに触れ、本展ではそのなかから重要文化財を含む全44件を展示すると述べました。
さらに、一見すると難解に映る古文書や印章も、似た資料同士を並べて細かな違いを読み解くことで、その背景にある歴史のストーリーが鮮やかに浮かび上がると語りました。

展示内容の説明をする川端教授
川端 泰幸教授による見どころの説明
川端教授は、本展覧会の見どころについて3つの章ごとにそれぞれ説明しました。1章|摺る―経典の文字武力ではなく“祈り”による防衛――国難に立ち向かった大蔵経
13世紀、モンゴル軍の圧倒的な侵攻という国難に直面した高麗の国王は、物理的な防衛の限界を痛感するなかで、国家事業として「大蔵経の開板(再雕)」を発願しました。武力ではなく、大蔵経を作り仏教の加護に頼ることこそが、国家の命運を託す最後の拠り所だったと川端教授は説明します。展示する「高麗版大蔵経」の精緻な木版の文字からは、極限状態のなかで国を護ろうと抗った人びとの切実な祈りが浮かび上がります。

阿毘曇毘婆沙論 巻第十五(高麗版)
2章|捺す―印章と印影国宝の金印が残した“本物の印影”と、2.5cmの銅印が語る古代外交
歴史の教科書でおなじみの国宝の金印「漢委奴国王」。本展では、その国宝指定の審査に携わった東洋学者・内藤湖南氏が、実際の金印に直接朱肉をつけて紙に捺した極めて稀有な「原鈐本」を特別公開します。また、大谷大学が誇る世界的にも貴重な「中国古印コレクション」では、印上部のつまみ(鈕)に注目。北方の遊牧民族には駱駝の形をした駝鈕を授けるなど、相手の居住地域や身分に応じた細かな外交規定があったことを紹介し、わずか2.5cm四方の意匠から中国の皇帝たちが築いた緻密な国際秩序が読み解けると述べました。

漢匈奴悪適尸逐王
3章|写す―拓本と写経失われた原石碑と複製碑の競演、そして甦った至宝の初公開
「写す(拓本)」のセクションでは、大谷大学所蔵の重要文化財「化度寺故僧邕禅師舎利塔銘(宋拓)」と、三井記念美術館所蔵の同碑の拓本を並置する本格的な比較展示を行います。同じ内容の碑でありながら、線の鋭さや摩滅の跡が大きく異なり、並べて初めてその違いが分かる点が見どころであると説明しました。さらに、住友財団の助成を受け、2年がかりの解体・修理事業が完了した鎌倉時代の高僧・凝然の自筆本「華厳十重唯識瑺鑑記(巻第一)」を、修復後はじめて公開することも紹介しました。

化度寺故僧邕禅師舎利塔銘(宋拓)
注目の展示作品
■【華厳十重唯識瑺鑑記 巻第一】(1巻・鎌倉時代 正応5年/1292)※修復後初公開鎌倉時代の高僧・凝然の自筆本。住友財団の助成を受け、2年がかりの本格的な解体・修理事業が完了し、本展で修復後はじめて公開されます。中世日本の学僧が自らの手で書き写した文字を、修理を終えた姿で間近に見ることができます。

華厳十重唯識瑺鑑記 巻第一
■【◎化度寺故僧邕禅師舎利塔銘(宋拓)】(1帖・原碑:唐時代/631)
初唐の三大書家の一人・欧陽詢が正書し、古来「楷法の極則」と絶賛された化度寺碑の拓本。原碑はすでに失われています。本展では三井記念美術館所蔵の化度寺碑拓本と並置し、同じ内容の碑でありながら線の鋭さや摩滅の跡が異なる様子を見比べることができます。両者を並べる本格的な比較展示は本展ならではの見どころです。

化度寺故僧邕禅師舎利塔銘(宋拓)
■【漢委奴国王印原鈐本(内藤湖南鈐印)】(昭和6年/1931)
国宝の金印「漢委奴国王」の国宝指定の審査に携わった東洋学者・内藤湖南氏が、実際の金印に直接朱肉をつけて紙に捺した極めて稀有な資料。日本国内での現存数は10点程度とされ、教科書でおなじみの金印が残した「本物の印影」を間近で見ることができます。

漢委奴国王印鈐本(内藤湖南鈐印)
■【駝鈕銅印「漢匈奴悪適尸逐王」】(1顆・中国・後漢時代/1世紀)
漢に帰順した匈奴の族長に与えられた銅印。つまみ(鈕)が駱駝をかたどっており、遊牧民族の生活になじみ深い動物が選ばれています。わずか2.5cm四方の意匠に、相手の居住地域や身分に応じた外交規定が表れています。大谷大学第13代学長・大谷瑩誠の旧蔵品(禿庵文庫)です。

駝鈕銅印「漢匈奴悪適尸逐王」
■【阿毘曇毘婆沙論 巻第十五(高麗版)】(1帖・高麗王朝時代/13世紀)
モンゴルの侵攻を受けた高麗では、第23代国王・高宗が敵軍の退散を祈願して大蔵経の再雕(再版)を発願しました。本品はその再雕本にあたる高麗版大蔵経の一つ。武力ではなく仏教の力をもって国難に抗おうとした人々の祈りが、精緻な木版の文字に刻まれています。

阿毘曇毘婆沙論 巻第十五(高麗版)
■【普曜経 巻第一(東禅寺版)】(1帖・中国・北宋時代 元豊8年/1085)
釈尊の前半生を記した大乗仏伝の一つ。北宋時代に福州の東禅等覚院で開板された私版の大蔵経で、国家事業ではなく官僚や僧俗からの募財によって成立しました。木版印刷の技術が発達した宋代の、美しい文字のすがたを伝えます。

普曜経 巻第一(東禅寺版)
主な展示作品

※◎は重要文化財。全44件のうち主な作品を抜粋。
大谷大学博物館について
本学博物館は、真宗学・仏教学・歴史学・文学など世界的に貴重な典籍、考古遺物、民俗資料など約12,000件を所蔵。年4回の企画展と年1回の特別展を地域に広く公開し、文化財を間近でみることができる博物館です。博物館の設置構想は、本学図書館が収蔵していた貴重資料および考古遺物や民俗資料などの文物を含む多様な資料の適切な保管と調査研究、1987年に開設された博物館学課程の充実化、生涯学習など社会的要請への対応などを目的に策定されました。

大谷大学について
大谷大学は、1665(寛文5)年の江戸時代、京都・東六条に創設された東本願寺の学寮をその前身としています。その後、いくたびかの変遷を経て、1901(明治34)年、近代的な大学として東京・巣鴨の地に開学。1913(大正2)年、現在の地に移転開設しました。親鸞の仏教精神に基づき、“人材”ではなく“人物”の育成を目標とする学び「人間学」を教育・研究の根幹とし、広く一般社会へ開かれた大学として確かな歩みを続けています。2021(令和3)年には、近代化120周年を迎えました。

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